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SKハイニックスと普通株・ADR間のアービトラージ取引の実務

2026年7月15日 17:43

SKハイニックスの7月14日の引け値は194.16ドルと韓国で取引されている普通株に比べて一時+50%近いプレミアムになりました。その背景にはADRに依拠したオプションが取引開始され、米国市場で強い買い物が入ったことが指摘されています。

現地普通株とADRはアービトラージ(鞘取り)が可能です。もしADRが普通株より大幅にプレミアムで取引されていれば、ADRを10株ショートし、それと同時に現地普通株を1株買えば、ADRの転換請求をかける手数料を引いた残りの金額がまるまる無リスクで儲かります。すくなくとも、理論的にはそうです。
 
これはETFとそれを構成する個別株のバスケットとの間でのアービトラージに極めて似ています。ただ多くのETFの場合、同一国に上場されている証券間でのクリエイション・リデンプション作業になるので、ADRのクリエイション・キャンセレーション作業よりサクサク度が高いと言えます。
 
そういうニュアンスの差こそあれ、基本的にはADR・普通株間のアービトラージはかなり自由自在にできるはず。(そうでなければ、そもそもADRの発行に許可が降りないです)
 
すると今起きているADR>普通株の乖離現象はADRスポンサーを務めるシティバンクNA内での転換事務作業がトレードに追いついていないことが主な原因だと思われます。言い換えれば、いまのような極端なADRのプレミアムは一過性の受け渡し実務の混乱がもたらす状況であり、ゆくゆくプレミアムは現地普通株が上昇することでサヤ寄せする、ないしは米国ADRが下落することでサヤ寄せする、もしくはその両方が同時に起こると考えるのが自然です。
 
アービトラージ取引の主体は、JPモルガンやゴールドマン・サックスのような韓国市場と米国市場の両方に会員権を持っており顧客のトレードを執行できる投資銀行ということになります。彼らは主に自己勘定で裁定を行うと思いますが、顧客のためにそれを行うことも可能です。
 
言い換えると「ADRは、転換請求をかければ、いくらでも新規の供給を作ることが出来るので、供給不足に陥ることは無い」ということです。
 
ショート・スクイーズに対する間違った先入観を持っていると、思わぬ失敗をするリスクがあります。