投資戦略
2026年5月9日 10:40
投資戦略をアップデートします。
■垂直的な上げ
米国株が「垂直的な上げ」局面に入りました。このような異常なラリーは短命に終わるとは限りません。ドットコム・バブルの最終局面、具体的には1998年の末から2000年の3月にかけて、ナスダック総合指数がいまと同じような垂直的な上げを演じました。あのときは1年以上もナスダックがぶっちぎりで値を飛ばしたことから考えて、今回もそうなる可能性は排除できないのです。
あのときは単にナスダックがS&P500をアウトパフォームしたと言うよりは上昇速度がどんどん加速し、「メルトアップ」とか「パラボリック(放物線的)」という形容のされ方をしました。
ナスダック総合指数は;
1998年10月 1,350
1999年1月 2,200
2000年1月 4,000
2000年3月 5,048
という風な、手のつけられない上昇を演じました。
AIブームの現在と当時では共通点が多いです。
まずどちらもインフラストラクチャ投資がテーマとなっています。
当時はブロードバンド・インターネットを実現するため通信インフラストラクチャを早く整備しないといけないというキモチが強く、「オプティカル(光)」、「メトロ(都市部)」と言うような単語が会話の端々に登場していました。
銘柄でいえばJDSユニフェイズ、ONIシステムズというような企業がぶいぶい言わせていたわけです。いまそれらの銘柄の名前を挙げたところで「はあ?」という感じで誰も覚えてないと思いますが。
そして物色の対象はそれらの「ド真ん中」の銘柄にどんどん集中してゆき、その他大勢の銘柄は「おいてきぼり」にされたような感じすら覚えたわけです。
今で言えばサンディスク(SNDK)とかAMDがちょうどこのイメージです。
ところが2000年3月第一週、一部の企業が利益警告を発しました。第1四半期(1〜3月期)の決算が、どうやら予想に届かないことが判明したので、経営陣が即座にそれを公表したのです。その理由は設備投資がパッタリと止まってしまったからです。
ひとたび1ダースほどの企業が「設備投資に異変が出た!」と告げれば、市場のセンチメントや経営者の態度は一変し、莫大な設備投資に投下されている投資資金が続かないのでは? という懸念へと変わり、本来はテクノロジーのバブル崩壊だったものが、すぐに金融セクターの問題として受け止められました。
その後、ナスダック総合指数は約-80%の下げを演じ、多くのドットコム株は-95%から全損になる銘柄も続出しました。
「インターネットが世界を変える!」ということはまったくそのとおりで当たっていたけれど……余りにも過剰な資本が、余りにも多くのプロジェクトに投下され、野放しの楽観論で度を外れたバリュエーションまで株価をつりあげた反動が来たわけです。
私は当時JPモルガンに勤めていたのですが、「バブルを演出した張本人は誰だ!」という悪者探しが始まり、まるで魔女狩りのような勢いで批判、非難が降り掛かってきました。
エンロン、ワールドコム、タイコというような大企業が倒産して、「それらの企業に融資していた!」というだけの理由でJPモルガンも悪者扱いされました。
個人的にも、たとえばワイフのお母様が来た時、「JPモルガンはけしからん!」と怒っていたのには閉口しました。
もちろん、投資銀行にも非が無かったか? と言えば100%潔白とは言えないかも知れません。でもあの時の「次に血祭りに挙げるのは誰だ!?」というムードは大衆の狂気そのものでした。
JPモルガンからレイオフされた後、私は一ヶ月ほど家に籠り、フランス革命の本を読み漁りました。ダントン、ロベスピエールといった革命の獅子、英雄たちが、ムードが一変すると断頭台の露と消えていった様は当時の自分の境遇にそっくりだと思ったからです。
■AIブームの中核はデータセンター投資
今回のAIブームの中核になっているのは、ドットコムバブルの時と同様の設備投資であり、具体的には下のチャートに示されたような巨額のコミットメントです。

なお「コミットメント」とは「あなたがデータセンターを建設すれば、私はそのテナントとして入居し、どれだけの演算費用を遣います」という合意を指し、**法的な拘束力も無いし会計報告上の開示も必要としません。**いわゆる「レター・オブ・インテント」という合意書が交わされている場合は、ましなほうです。それすらない口約束のケースもあります。
上のチャートを見ると、コミットメントの約半分はオープンAIとアンソロピックというリーダー企業2社によって占められていることがわかります。それではオープンAIの売上高は? と言えば、今年は225億ドルが見込まれています。先ほどのコミットメントのチャートでオープンAIの合計額は7,180億ドルなので、向こう5年間のオープンAIの予想売上高の合計(6,625億ドル)を超える「約束」を、もう同社はしてしまっているという風にも捉えることができます。

アンソロピックに関しては、最近、オープンAIの売上高を抜いたということが噂されています。そうであれば、たぶんアンソロピックもオープンAIと同様か、それより少し多い売上高を叩き出すことでしょう。
しかしそれ以外のAI企業は殆ど売上高を上げていないため、上のクラウド各社のコミットメントのうち緑の部分はまったくの絵空事と考えたほうが無難です。
すると売上高でカバーできない部分はどうする? ということですが、「だからこそIPOを成功させないといけない」という点に帰着するわけです。
■IPOは成功するのか?
今年はスペースX、オープンAI、アンソロピックのIPOが予定されています。私も昔、引受の仕事をしていた関係で、このへんは「昔取った杵柄」なのですが、たぶん成功すると思います。
重要な点として、このようなイベントが控えている時は、ラリーは持続しやすいという点です。
アメリカの市場参加者のキモチは、このイベントに向けてひとつになっていると形容することも出来るでしょう。
■IPOが成功したからすべて安泰とは限らない
ただこれらのIPOが成功したからすべて上手くいくということでは無い気がします。なぜなら、市場の一部には、すでに厭戦気分ならぬ過剰な設備投資への警戒ムードが漂いはじめているからです。
その一例がメタ・プラットフォームズ(META)であり、先日、「良い決算」を出したにもかかわらず、株価は高水準の設備投資への懸念から冴えません。
実はクラウドに積極投資しているのはハイパースケーラーと呼ばれる大手ハイテク企業であり、それらはかつてはぶいぶいキャッシュを生んでいたのですが、いまは設備投資負担が重くなっています。なお大手ハイテクではアップルだけはAIデータセンターに手を染めていません。

設備投資に膨大なキャッシュを投入したので、自社株買い戻しがおろそかになる企業が増えています。

最近、アップルが過去最高値を更新し、新波動入りした理由は、まさしく「AIの狂乱ブームを賢くスルーしている」ことを評価する動きと言えます。
■「エヌビディア・キラー」の登場
AIデータセンターを準備したから競争優位に立てる? と言えば、それはそうとは限りません。なぜなら、エヌビディアのブラックウェルを実装したデータセンターより、ずっと速いデータセンターを**セレブラス(CBRS)**のウエハースケール・インテグレーションを使えば作ることができるからです。同社はオープンAIのサム・アルトマンとかブロックのジャック・ドーシーから絶賛されています。
この企業は近くIPOされるのですが、一般投資家がその存在を知ってしまえば、いま物量作戦でやたらとHBMやGPUを揃えることでスピードの問題を解決しようとしているAIデータセンターのビジネス戦略が古色蒼然たるものに見えることウケアイです。
■予想
2026年末のS&P500のターゲットは6,700を予想します。
2026年末のドル円は151円を予想します。
2026年末の10年債利回りは4.30%を予想します。
2026年末のフェデラルファンズ・レートは3.25%を予想します。
2026年末の失業率は4.5%を予想します。
2026年末の消費者物価指数は3.30%を予想します。
2026年末のGDPは+0.50%を予想します。