マーケットのボラが高くなったとき、なぜ「よし!ここで儲けてやる!」というトレードがだんだん上手く行かなくなるのか
2026年6月23日 19:03
マーケットのボラが高くなった時、初心者ほど(いまこそ儲けるチャンス!)と脳汁を溢出しながらハッスルします。しかし、たいていそういうケースでは思うように取れないことが多いです。これは次の株価の方向が「上」か、「下」か? というのを占う力が足らないからではなくて、ボラの増加が市場全体としてのレバレッジを削ぐ結果となり、強制決済の増加などを経て、最終的には投資家がうまく立ち回れなくなる環境が醸成されるからです。
レバレッジとは「借金してポジションを建てること」を指し、自分の資金にプラスするカタチで証券会社が信用を提供することで、自分の元手より大きなポジを持つことが可能になるわけです。いま台湾、韓国を始めとする世界の個人投資家はレバレッジ取引に夢中になっています。
信用(マージン)取引では担保比率という概念が重要になります。例えばあなたが10万ドルの株式のポジションを建てる場合、自分の元手が5万ドル、残りは証券会社に信用取引でポジションを建てさせてもらったとします。この場合、証券会社はあなたに5万ドルを貸しているのと同じです。この例では担保比率は50%です。
その10万ドルの株式は証券会社の金庫にあります。だから「券面を担保に取られている」状態です。
もし株価が±1%で動くのなら、50%の担保は十分です。
しかし株価が1日で±20%動いたとしましょう。もし1日で−20%なら、その株式の価値は8万ドルに下がり、ローンのエクイティは3万ドルに下がります。
今後さらに損が広がる可能性は、ボラティリティ×日数で決まるので、高いボラの日々が長く続けば、証券会社は担保不足になるリスクが高まるわけです。その場合「もっと担保を積んで下さい!」という要求を証券会社は個人投資家にします。これを「追証」と言います。
すると、ボラの増加→信用担保比率の上昇→追証を要求される→それを積めない投資家のポジションは証券会社が勝手に売り払う(強制決済)→結果としてもっとマーケットが下がる→それは市場のボラをもっと増幅する
という悪循環(feedback loop)を生むわけです。1998年のロシアのデフォルトの際、LTCMが破綻したのはそのような経緯によります。
いま信用の担保比率と、それによって得られるレバレッジの関係を示すと;
50%=2X
25%=4X
10%=10X
5%=20X
という感じです。米国では連邦準備制度理事会が「レギュレーションT」と呼ばれるルールで信用担保比率(イニシャル・マージン)は50%と決めています。このルールは1974年に施行されて以来、一度も変更されていません。
しかしその次にFINRA(日本の証券業協会のような組織)が最低メンテナンス担保比率を決めています。それは25%です。
さらにチャールズ・シュワブ、インタラクティブ・ブローカーズなどの個々の証券会社がさらに厳しい社内信用ルールをその顧客に課しています。
これとは別に証券会社が利用する決済機構(例:NSCC)が証券会社に対してトレードを受け渡しする際、一定の現金を積むことを要求します。一例として2021年にゲームストップ株が乱高下したとき、NSCCはロビンフッド証券に対し高い現金担保を積むことを要求しました。ロビンフッドはその現金を持ち合わせていなかったので、仕方なくゲームストップ株を「買い禁止」銘柄にしなければいけなくなりました。
もし皆さんが(よし、ここでイッパツ取ったる!)と思った矢先に、その銘柄が「買い禁止」指定されてしまったら…どんなにあなたの相場観が正しくても、そのチャンスは活かせません。
決済機構は、個人投資家に対して意地悪をしようとして現金担保比率を上げているのではなくて、もしボラの増加で**DK(決済の未済)**が増えた場合、決済機構そのものが破綻することを回避するために現金担保比率の上昇を要求するわけです。