SaaS株が静かな皆殺しゾーンへ
2026年2月4日 20:03
SaaS株の下げがきついです。
そもそもこのセクターは歴史的に「遠い将来の成長を今日の価値に換算する」DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)などのモデルを使って株価判断されてきました。
これは割引率(=金利)をどう設定する? ということで妥当価格が大きく変わります。新型コロナ後の経済再開の局面でボトルネック・インフレが生じ、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを繰り返したことは、だからDCFモデルに依存するSaaSのバリュエーションにとってアゲンストの風になりました。
加えて成長率に対する期待値がちょっと下がると理論価値が蒸発する問題も孕んでいます。いまはAIからの競争でSaaSが獲得できる将来のマーケットが狭まる=おのずと成長率を控え目に考えないといけないという連鎖でバリュエーションの剥落が起きています。
また今後企業はAIへ支出をシフトしていくので、それに呼応してSaaSのシート数を削減するプレッシャーも働きます。
「それ、Copilotでよくない?」というソフトウェア単価のコモディティー化が起きており、ニッチSaaSほど生き残りが難しくなっています。
SaaSの多くは株式公開前は「ARR成長率が40%なら赤字でもオッケ」というメンタリティーの中で育ってきました。しかし株式を公開した途端に市場参加者はFCFマージンを出せ!ということを要求してきます。
この環境の中で生き残るSaaSは、会計、決済、基幹システムなどのミッション・クリティカルな分野のSaaSであり、スイッチングコストがとても高いサービスということになります。また大手のほうが有利です。
それではどのSaaSが生き残る?ということですが、インテュイット(INTU)はFCFマージンが40%、アドビ(ADBE)は35%、セールスフォース(CRM)は30%なので、このへんは確実に生き残ります。
インテュイットの売上高成長率はとても安定しているし、FCFの質はほぼ完璧です。銀行のシステムと直結を許されている数少ないソフトウェアであり、ここはAIは入り込めません。
アドビの売上高成長率は中程度ですがFCFの質は非常に高いです。R&Dをけずらなくてもこの水準のFCFマージンを出しているのは素晴らしいです。Creative Cloudは職業インフラに他ならないので、これを使うことを止める人は、失業リスクを背負い込みます。またPDFは世界標準なのでなくならないです。またFireflyでAIを破壊者ではなく課金装置にした点も見逃せないです。
セールスフォースは企業の神経系であり、データ×ワークフロー×エコシステムの粘着力があります。正直言ってセールスフォースのプロダクトは重いし高いし複雑です。だからCRM不要論がときどき出ます。でもIBMのメインフレーム・コンピュータが長く生き延びたように、CRMも駆逐されるには長い時間を要します。
これらの銘柄は「いま買って、大丈夫?」という葛藤があります。
私は常日頃**「葛藤なく買った株は、やられやすい」**ということを説いています。恐怖でゲロ吐きそうな場面で仕込んだポジションが、お宝ポジションになるのであって、財務諸表が読めない「ムードで相場を張っている人たち」こそが淘汰される人種です。