アメリカはイランへの陸戦を決断する?
2026年3月8日 13:49
トランプ大統領は3月7日(土)、「イランに陸軍を派兵したほうが良いかもしれない」とほのめかしました。クルド人に武器を供与し代理戦争を展開することに関しては消極的な姿勢を示しました。これが株式市場にとって持つ意味は何でしょうか?
結論から言えばアメリカがイランに陸軍を展開する可能性は低いです。
もしそれでも陸戦を戦う! というのであれば、株式市場は大きく下げます。
順番に説明してゆきます。
過去にアメリカが中東でアメリカ兵を派兵し陸戦を戦ったことは2度あります。一回目は1990年夏にイラクのサダム・フセインがクウェートに侵攻し、それを制圧した後、サウジアラビアまで攻め込もうとしたときです。これに対しアメリカとサウジアラビアは1991年1月から反抗に転じました。いわゆる湾岸戦争です。
二回目は2001年9月11日に「アメリカ同時多発テロ事件(いわゆる9・11事件)」が起きた後、ブッシュ政権はイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、アメリカを防衛するためには先制攻撃が必要と説き、「大量破壊兵器を持っている」イラクへの攻撃を決断しました。これが2003年3月20日に開戦となったイラク戦争です。
株式の投資判断に際し、戦争のスケールと準備に要した時間がとても重要なので整理しておきます。
1991年の湾岸戦争の場合、投入されたアメリカ兵は44万人です。準備に要した時間は5ヶ月でした。
2003年のイラク戦争の場合、投入されたアメリカ兵は17万人です。準備に要した時間は4ヶ月でした。
現在イラクに居るアメリカ兵は2千人です。主にアルアサド空軍基地、アービル空軍基地に居ます。
現在、クウェートには将来の陸戦に備えて前線軍備備蓄プログラム(APS-5)により一個師団分の戦車などが保管されています。しかしこれでは全然足りません。この備蓄は4,500人の兵士を空輸し、クウェートに到着次第、すぐに始動できるためのストックですが、戦車90台、兵員輸送車140台、大砲18門などから成っています。
イランの国土は165万平方メートルでイラクの4倍です。またイラク側から攻め込むには山岳地帯を通らないといけないので、戦車などが動きにくいです。
そのようなことを考慮すれば、20から30師団、兵員数にして30万人から50万人が必要です。
いまホルムズ海峡は実質的に航行できなくなっているので、戦車などを送る輸送船(ロー・ロー船)はアラビア湾に入れないはずです。普通、戦車はホルムズ海峡からアラビア湾を北上し、いちばん北にあるクウェートのシュワイバ港に陸揚げされますが、このルートが使えないので陸戦に必要な兵器を数ヶ月以内に準備するのは無理です。
陸戦をやらなければいけないことが明白になった1990年夏のS&P500の高値360からその年の安値295まで、陸戦準備期間のS&P500指数の下げ幅は−18%でした。
イラク戦争のケースは、まずドットコムバブルが弾けアメリカが不況になった、次にアメリカ同時多発テロが起きた、などのイベントを経て開戦の準備がなされました。従ってこれらのイベントが株価に大きな影響を与えていたのですべての理由を開戦準備に帰すことは出来ません。