スペースXとオープンAIの新規株式公開について
2026年2月12日 04:43
今年はスペースXとオープンAIという2つの大型新規株式公開案件が控えています。
スペースXは6月8日もしくは9日に金星と木星が並んだタイミングで新規株式公開(IPO)したいとイーロン・マスクは言っています。
もともとイーロンはスペースXのひとつの事業であるスターリンクだけをIPOする考えでしたが、いまはスペースXすべてをIPOする方向に傾いています。それに先立ち、スペースXにXAIを買収させ、「宇宙にデータセンターを作る!」という構想をぶち上げています。
これのほうが単なるインターネット・サービス・プロバイダーであるスターリンクよりセクシーな投資ストーリーが描けるというわけです。
もちろんスターリンクは一度加入者を獲得すれば毎月「ちゃりん、ちゃりん!」と集金するだけのビジビリティの高いビジネスであり、それはIPOしやすいです。多分、EBITDAマルチプルで15倍くらいのバリュエーションを付与することができるはずです。
ところがスペースXをIPOするとなると今同社はリスキーなスターシップを開発中であり、これまでに何度も打上に失敗しましたし、打ち上げ施設、火星にインフラストラクチャをこしらえる費用、ラプター・エンジンの量産体制を整えるための設備投資など、不確実な要素がドッと増えます。
R&D費用も嵩むし、ペイオフはいわゆるロング・デュレーションにならざるを得ません。
だからスターリンクのバリュエーションを弾き出す際に仮にWACCを8%とすれば、スペースXではWACCは13%くらいになると思われます。
一方、スターリンクではなくスペースXをIPOするメリットとしては、ストーリーとしては後者のほうが遥かにセクシーだということです。つまりビジョン・プレミアム、イーロン・マスクのファウンダー・プレミアムというものを乗っけやすいわけです。
言い換えれば投資家は単にスペースXの将来のキャッシュフローを買うわけではなく、オプショナリティ、希少性、文化的象徴…そういうものまで含めて投資判断すると予想されるわけです。
これらを勘案すると今の段階ではスターリンクをIPOするよりスペースXをIPOしたほうが高いマルチプル(たぶんEBITDAの30倍から40倍?)をGETできるように思います。
なおスペースXのコンプス(比較対象)としては軌道上インフラストラクチャのメーカーであるレッドワイヤー(RDW)、宇宙輸送サービスのインテューイティブ・マシーンズ(LUNR)などが考えられます。
もちろん小型ロケット打上のロケットラボ(RKLB)も比較対象に入ってきますが、やっていることがスペースXに比べて極めて矮小化されてしまうので、スペースXは超然とした態度を取ると思われます。
仮にスペースXが1兆ドルのバリュエーションを目指すとするなら、5%の株式を売り出すだけで調達金額は500億ドルとなり、サウジ・アラムコの290億ドル、アリババの250億ドルを超える大型IPOになります。
一方、イーロン・マスクと仲が悪いサム・アルトマンのオープンAIは今年の年末頃にIPOしたい考えです。(=イーロンがスペースXのIPOを6月に繰り上げたのはオープンAIに先行するためです。)
オープンAIは現在約1兆ドルのバリュエーションが付与されています。いまは大赤字だしIPO後も高水準の継続投資で赤字が予想されるため、調達金額は余り無理しない(500億ドル程度?)と思われます。
いまSaaSの多くはPSRで7倍前後で取引されているので、もしSaaSの下落相場が続くようなら25倍を超えるPSRでオープンAIがIPOしようとすれば(ちょっとムリがあるな)と判断されかねません。もっともオープンAIの本当のコンプスはパランティア、エヌビディア、スノーフレークなどになると思います。
キャッシュの費消に対する一般投資家の許容範囲は、オープンAIのほうが点が辛くなると思われます。