投資戦略
2026年6月9日 15:09
投資戦略をアップデートします。
■弱気転換
先週、私は「マーケットには黄信号がともった」とし、相場に対する意見を強気から中立にしました。今日、中立から弱気に転換します。つまり相場は赤信号です。
そのきっかけは「スペースXのIPOの販売がうまくいっていない」という報道に接したからです。
もちろんイーロンのことなので、6月11日はなんとか値決めに持ち込むと思います。
しかし12日に取引が開始されれば、いきなり公募価格である$135を巡る攻防となり、最悪の場合はスルスルとスペースXの株価が半値近くまで下げるリスクがあるからです。
■イーロンの錬金術
もともとスペースXの本業はロケット打ち上げサービス、地球低軌道(LEO)を回る人工衛星を使ったインターネット・サービスなど、直接宇宙に関わる業務でした。
しかし今年の2月にXAiを買収した頃からストーリーが大きく変わり始めました。
この買収の直前のスペースXのバリュエーションは8000億ドルでした。そしてXAiは2500億ドルでスペースXに買収されました。
XAiはツイッター、Grokなどを展開する企業です。ハッキリ言ってGrokを最先端のAIだと考える投資家はいません。
ところがこのM&Aが完了した日、スペースXは自社のバリュエーションを1.25兆ドルだと公表したのです。内訳は;
スペースX 1兆ドル
XAi 2500億ドル
合計 1.25兆ドル
です。つまり一夜にしてスペースXの価値が2000億ドル増えたのです。
これは投資コミュニティからは「シナジー効果だ!」と解釈されました。
ところがスペースXのIPOが動き出すと「宇宙でAI事業をする!」というストーリーがどんどん強調されるようになり、現在は1.75兆ドル前後のバリュエーションでIPOマーケティングが進行中です。つまりわずか4か月の間にもう5000億ドルの「IPOに向けた熱狂プレミアム」が上乗せされたということです。
すると少なくとも7000億ドルは「出所不明のバリュエーションの追加」と言えます。
■価格発見を省いた
さて、普通のIPOでは主幹事がまず価格レンジを示し、IPOマーケティングをキックオフします。そして販売状況を見て(うーん、売れ行きがイマイチなので価格レンジを下げるか?)とか、逆に(需要が強い!価格レンジを切り上げよう!)というような価格改定を行います。
これは価格発見(price discovery)と呼ばれる重要なステップで、値決め価格を、その株に対する実需とすり合わせる作業に他ならないです。
スペースXのIPOでは、はじめから引き受け主幹事が「今回のIPOは$135の一本値でマーケティングします!」と宣言したため、需要の多寡にかかわらず、それは動かせなくなってしまったのです。
それは何を意味するか?
その意味するところは、投資家からの需要が芳しく無く本来であれば価格を下げなければいけない場面でも「えいやあ!」と無理に値決めに持ち込まれる可能性が高いということを意味します。
すると上に書いた説明で、1.75兆ドルのバリュエーションのうち7000億ドルは説明のつかない価格の吊り上げなので、最大限で40%ダウンサイド・リスクがあるわけです。
つまり$135で値決めされるスペースXのターゲット価格は81ドルということになります。
■宇宙のIPOの失敗がなぜAIに飛び火する?
もしスペースXのIPOが取引開始直後から公募価格を死守する攻防となった場合、投資家による落胆が広がります。
その場合、(なぜこうなった?)という悪者探しが始まります。
スペースX自体は社歴が24年もある古い企業で、手堅いロケット打ち上げを背景にコツコツと事業価値をはぐくんで来ました。それがここ半年足らずの間にXAiの買収を経て「AIストーリー」へと衣替えしたわけです。
だから(疑うべきはスペースXのしっかりした宇宙事業のほうではなく、GrokなどのAI事業では?)という考えが出るのは当然です。
それはAIバブルの過熱について投資家が深く自省する機会となります。
その場合、9月のレイバーデー明けにマーケティングがキックオフされるアンソロピックやオープンAIの資金調達にも影響が出るリスクがあります。
AIは世界の人々に定着すると思います。
でもそれとAI関連株が現在のビジネス・モメンタムをキープし、株式のバリュエーションをキープできるということとは、別問題です。
いまAIデータセンター建設がアナウンスされた案件の過半数が三か月以上の工事の遅延を経験中です。すると株式市場からの資金調達の予定の狂いと併せると、AIのストーリーをもっと保守的な期待値へと下げてくる必要性が高まると思います。
■予想
2026年末のS&P500のターゲットは7,000を予想します。
2026年末のドル円は153円を予想します。
2026年末の10年債利回りは4.50%を予想します。
2026年末のフェデラルファンズ・レートは3.50%を予想します。
2026年末の失業率は4.40%を予想します。
2026年末の消費者物価指数は3.70%を予想します。
2026年末のGDPは+1.50%を予想します。