投資戦略
2026年3月11日 21:03
投資戦略をアップデートします。
■トランプ大統領「ほぼ完了!」宣言、備蓄放出が発表されたが…
トランプ大統領はイランでの作戦が「ほぼ完了!」と宣言しました。
加えて先進各国は協調して大型の原油備蓄の放出を発表しました。
これらの発表を受けて瞬間風速で$120に迫っていた原油は$85まで下げています。しかし……そこで**「好材料の出尽くし」感が出て、市場参加者は再び悲観的なシナリオに傾きつつあります。
■イランが機雷を敷設?
3月10日、「イランがホルムズ海峡に機雷を敷設している!」というニュースが出ました。米国政府は「いままでの敷設された機雷は10個程度に過ぎない。停泊していたIRGCの船を16隻破壊した」と発表しました。
しかし既にセットされてしまった機雷を米海軍が除去しているというニュースはありませんし、イスラム革命防衛隊(IRGC)が機雷敷設に使用できるスピード・ボートは1500隻くらいあります。
つまり「安全が確保された」と判断できるような材料はいまのところ無い**のです。
ホルムズ海峡は実質的に使えなくなった……荷主はそういう風に考えているし、トランスポンダーを切ろうが、切るまいが、どのみちホルムズ海峡は今は使えないことは明白です。
■でもサウジは原油を輸出できる?
でもサウジは東部油田地帯からサウジ西部の紅海のヤンブーにつながる東西パイプラインを持っており、サウジが生産する原油の70%くらいはそこから出荷できます。

(出典:EIA)
だから「サウジの出荷がゼロになるわけではない」という安心感が投資家の間にはあります。
ヤンブー自体は安全に原油の積み込みが出来ます。しかし南回りでアジアに向けて原油を輸送しようとするとイエメンの近くのバブ・エル・マンデブ海峡を通らないといけません。ここはイランから支援を受けたフーシーという武装集団が居て、昔から海賊行為を行ってきた地域ですし、機雷を敷設する能力もあります。
するとヤンブーで積まれた石油はスエズ運河を通り、地中海を経由、さらにアフリカ大陸を回りアジアに出荷されることになるのです。
これはとても遠回りです。
そのような理由からエネルギーのサプライチェーンに与えられるプレッシャーはトランプ大統領の「ほぼ完了!」宣言とか、先進各国の協調備蓄放出とは無関係にこれからも続くと考えるのが自然です。
■そろそろIRGCを理解したほうがいい
投資家は、そろそろIRGCという愚連隊のような武装集団の本質を理解したほうがいいです。
IRGCは1979年のイラン革命のとき、アメリカの傀儡政権だったシャーを倒し、最高指導者になったアヤトラ・ホメイニ師が(ひょっとしてイラン軍は自分には味方してくれないかもしれない)と考え、近衛兵のようなカタチで自分の身辺警護を担当する別の軍隊を編成したことに始まります。
したがって設立当初から宗教に基づいた、イデオロギー的な武装集団で、革命武装集団の雰囲気をこんにちまでずっと堅持しています。現場での裁量余地が大きく、従軍する傍ら金儲けの商売も始めてしまうという、ある意味規律に欠く集団です。
その武装は軽装で、ゲリラ的な戦い方が中心で、兵士の命の値段は軽いです。戦死したらそれは殉死であり名誉になります。そのようなカタチで人的資源の消耗戦にはびくともしません。そしてなによりも長期戦が得意です。
相手が疲弊し、帰れば「勝ち!」になります。
一方、米軍は職業軍人が中心ですし、大統領→国防長官→軍隊の命令系統という、トップダウン方の組織で、厳格な階層があるプロ軍隊です。
米軍は圧倒的火力、ハイテクを誇り、短期決戦に強いです。しかし戦死者が増えると有権者から突き上げがあります。つねに世論を機にしないといけない関係で、ベトナム戦争のような泥沼の長期戦は最も避けたいです。
■長期戦なら心配しないといけないのは米国経済のほう
IRGCはこのように正面攻撃を避け、わざと長期戦に持ち込むような作戦を取り始めています。もしアメリカがその手に乗ってしまえば、決定打に欠く、煮えきらない戦局がダラダラと続くことになります。その場合、原油価格は高止まりし、それは米国経済を疲弊させます。
具体的には金融コンディションがタイトになることが心配されます。一例としてJPモルガンはプライベート・クレジットのポートフォリオの資産評価額をバッサリと減額すると同時に「新規のプライベート・クレジットの貸し出しを控えろ!」という指示を社内に出しています。
これから経営がおかしくなるプライベート・エクイティー・ファームは次々に出てきます。その少なからぬ業者たちが、AIデータセンターの資金の貸し手なので、AIブームもおぼつかなくなるわけです。
■投資戦略
いまは無理をすべき時ではないです。
(ボラティリティを上手く取ってやろう!)と下手にトレーディングしようとしても、地政学リスクは複雑すぎて、一寸先すら読めない状態です。
こういうときはポートフォリオのポジションを落とし、いろは坂をロー・ギアでエンジンブレーキを効かせながらソロリソロリと下りてゆくようなていねいな運用をする必要があります。
■予想
2026年末のS&P500のターゲットは5,890を予想します。
2026年末のドル円は151円を予想します。
2026年末の10年債利回りは3.20%を予想します。
2026年末のフェデラルファンズ・レートは3.00%を予想します。
2026年末の失業率は4.7%を予想します。
2026年末の消費者物価指数は2.2%を予想します。
2026年末のGDPは+0.0%を予想します。