戦争と投資
2026年3月15日 10:34
イランとアメリカの戦争が始まり、追い詰められたネズミが猫を噛むようにイランが何のカンケーもない周辺国へミサイルやドローンをめくらめっぽう放ち、ドバイのパーム・ジュメイラのフェアモント・ホテルの前にそのひとつが着弾した日、そのホテルからそう遠くないライバルのホテルのフロントに勤務している弟子からDMが来た。「これって買い!でいいんだよね?」
「キミは大丈夫だったわけ?」
「もちろん!」
「怖くないのかね?」
「へっちゃら! ねぇ、そんなことより、買い?」
俺が施した英才教育が効いたのか、メンタルが鉄板すぎる。
「うーん、そうだなぁ。ロスチャイルドは舗道に血糊がある時買え!と喝破した」
「じゃあ、やっぱり買いなのね!」
「まあまあ、ちょっと待て。巨視的に見れば戦争は買いだが…タイミングは早すぎる。ビビリが足らない!」
「うちのホテルも客足がパッタリ止まった。ロシアからの客が来ないので、得意のセールスができない。手持ち無沙汰。株トレ・アプリばかり眺めている」
株トレ・アプリとはeToroだ。
「難儀やなぁ。そら、トレード中毒や。まず…それを直さんといかん。順番に説明しよう」
「タイミングが早すぎる理由として、いま原油価格は上がり始めたばかりだ。これからガソリン価格が急騰する。いまこっち(アメリカ)では全米平均レギュラー・ガソリン価格は$3.68だ。」

(出典:セントルイスFRB)
「いまガソリンだけではなく、肥料も不足している。アラビア湾が肥料の生産地なので。ホルムズ海峡が閉まっていて、出荷できない。それは穀物の値段も上昇することを意味する。そうなれば、今後消費者物価指数(CPI)は上昇するかも」

(出典:セントルイスFRB)
「ウォール街の投資家の大半は、新型コロナ後の経済再開時のボトルネック・インフレで政策金利がグイグイ引き上げられた後、それがゆっくり下がってくることを見込んで株式に目一杯投資している。今年は2回利下げを織り込んでいた。でも…ガソリン価格や穀物価格が上昇すれば利下げはおぼつかない」

(出典:セントルイスFRB)
「北海ブレントの値段は$103だ。いまホルムズ海峡は閉まっているのだが、そのすぐ外が受け渡し地になっているオマーン原油(OQD)は$144だ。普通、こんなに原油価格が上がると経済は混乱する」

(出典:セントルイスFRB)
「ところが米国株の株価収益率(PER)は未だ24倍と高い。今回のように悪いニュースが飛び出したら…ひとたまりもない水準だ」

「アンドリュー・ロス・ソーキンが書いた2つの本、『Too Big To Fail』と『1929』を宿題として読みなさい!と言っただろ?あれに書いてあるようなことが、これから起こるんだ」


「あー、なるほどね。その本なら言われた時にすぐポチって、読了してる」
「つまりマーケットは、まだまだ下を見る。でもキミの場合、まだ投資を開始して日が浅い。だからいま最も重視しないといけないのはボトムはいま? を心配することではなく、毎月こつこつ何も無かったかのように入金するリズムを堅持することだろう」
「やられるとわかっていながら、入金するわけ?」
「そう。なぜなら、最終的には(よい習慣)がマーケット・タイミングより必ず勝つから」
「へえ、そうなんだ」
「普通、株式投資のリターンは3つの要素に分解できる。ひとつめは金利そのものからGETできるリターン。2つ目は相場全体の上げ下げで説明できるリターン=これをβ(ベータ)と言う。3つ目が運用者その人の力量、具体的にはマーケットタイミングや個別株の選定能力で説明できるリターン=これをα(アルファ)と言う」
「それって、アトリビューション・アナリシスってこと?」
「そうだ。むずかしい言葉をよく知っているね。米国の過去50年くらいの株式投資のリターンをこの3つの要素で分解してみると金利は20%前後、βは60%から70%、そしてマーケット・タイミングや個別株の選定能力、つまりαの貢献度は0%からせいぜい10%という厳しいデータがある」
「さっきインフレのせいで今後は金利が上昇すると言った。すると3つの貢献要素のうち金利の割合がUPし、β、つまりマーケット全体の動きの貢献度は割合が小さくなる」
「じゃあアタシみたいにマーケット・タイミング狙いするのは徒労というわけ?」
「相場はエキサイトメントを求めてやるもんじゃない。脳汁出しながらやるトレードは、大体、失敗する。」
「ちぇ、つまんないの!」