アルファベットは大型増資を経ていよいよAIカンパニーに変身
2026年6月4日 01:12
アルファベットが昨日発表した大型増資は順調にマーケティングが終わり(=なぜなら424B5目論見書がもう米国証券取引委員会のウェブサイトに出ているため)、新しく得た軍資金でいよいよ検索エンジンの会社からAIの会社に変身する体勢に入りました。
6月2日、アルファベットは4つの売出目論見書を提出しました。
1. 普通株式(クラスAならびにクラスC)$15,000,000,000
2. シリーズA預託証券(強制転換優先A株の20分の1を代表する証券)1.5億株
3. シリーズB預託証券(強制転換優先B株の20分の1を代表する証券)1.5億株
4. 第3四半期にATMにて$40,000,000,000の新株を随時発行
これらの証券は4.を除いて順調に捌けたと思われます。約定日は6月4日になると思います。
なお、上記に加えてアルファベットはバークシャー・ハサウェイにも$10,000,000,000の新株のはめ込みを行いました。
これらの資金調達はとてもソフィスティケートされていると思います。
アルファベットは三種類のいわゆる「種類株」を出しています;
クラスA(GOOGL)1株につき1票の投票権つき
クラスB 1株につき10票の投票権つき=創業者の持ち株
クラスC(GOOG)投票権なし
2. はクラスA株に依拠する強制転換優先株を、咀嚼しやすいように20分の1に小分けにした証券だと思ってください。強制転換優先株は額面(パー)$1,000で発行されます。でも多くの投資家はそういう大きな額面の証券を買いたがらないので、それを20で割り、$50の取引価格でトレードを開始できるように工夫したのが「預託証券」というわけです。
3. はクラスCに依拠する強制転換優先株です。
ここで「強制」とは、3年後に、有無を言わせず、普通株式に変わるという意味です。
普通株式ではなく強制転換優先株を出す一つの理由は、インカムゲインをもう少し欲しい投資家により有利な優先株配当を打ち出す意図があるからです。
そのインカムで色をつけてある部分が、ダウンサイドをある程度プロテクトすることに繋がると考えることが出来るわけです。典型的な強制転換優先株のバイヤーは生命保険会社、インカム型投信、転換社債専門ファンドなどです。
以上のトランザクションで、アルファベットは今日の時点で約400億ドル、ゆくゆく合計800億ドルの資本を手に入れます。これは上場企業の強みを見せつけた格好という風に形容できるでしょう。
しかしストレートに800億ドルをイッパツで普通株式で調達するのではなく、上記のように複雑なストラクチャーにしたということは幹事団が(ひょっとすると巨大な売り圧力に市場が耐えられないかも?)という一抹の不安を覚えていたことを示唆しています。
ATMは受給関係を崩すのでバイサイドは嫌気します。今回、「いまから90日後にATMします!」と発表したのは、将来の資金調達計画に関してちゃんと今開示し、訴訟や批判の対象となることを逃れる意図があります。
アルファベットは今日手にした軍資金で一掃AIへの投資を加速させ、だんだん「グーグル検索」を「ジェミナイAI」の対話形式発見広告(conversational discovery ads)に置き換えることを押し進めます。それはいままでの検索結果(青でハイライトされたリンク先)を見ることが少なくなり、AIが示すプロダクトなどをクリックする機会が多くなることを意味します。そこでは、もうウザい「スポンサード・リンク」とかは関係なくなってしまうわけです。
すると従来のSEOのテクは無用となり、「AIに拾ってもらうためには何をする?」ということを広告主は考えなければいけなくなります。具体的にはレディットのディスカッション・フォーラムで建設的な意見が交わされているというようなことがAIにピックアップされやすくなる秘訣になります。
グーグルの場合、既に広告主とのリレーションシップがありますし、ペイメントの仕組みが確立しているし、過去のマーチャンツのデータ、MAP、ショッピング、アンドロイドなどいろいろな経路から広告ビジネスをもりたててゆくことができます。
するとチャットGPTがAI広告のビジネスを軌道に乗せる前にジェミナイ広告が消費者向け広告を総取りしてしまう可能性もあるわけです。