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ベネズエラの石油産業は復活しない 但しオフショア油田開発は別

2026年1月4日 14:11

アメリカがベネズエラのレジーム・チェンジを試みています。

マドゥロ大統領は米軍に拘束され、ニューヨークに移送中です。ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所で裁かれる予定です。これはウォール街お膝元の裁判所で、主に金融犯罪を扱っています。つまりマドゥロ大統領は麻薬取引の罪状で訴追されるわけです。
 
そもそもベネズエラは3000億バレルの確認埋蔵量を誇っており、サウジアラビアより沢山原油を秘めていると言われています。これは昔からよく知られた事実です。

ベネズエラの原油はオンショア、つまりベネズエラの陸地に存在し、具体的にはオリノコ・ベルトという地域に存在します。マラカイボ湖という湖の下に眠っています。
 
ベネズエラの原油を理解する上で最も重要なポイントは「重くて酸っぱい」原油だということです。コールタールのような、どろどろした代物です。
 
原油の軽さを表す指標にAPIグラビティがあります。オリノコ・ベルトの原油のAPIグラビティは8~10度(数字が低いほどヘビー)です。また硫黄含有率が3.5~5.5wt%で、とても酸っぱいです。それは特別な石油精製施設を必要とするし、環境問題も伴うので新設の石油精製施設は建たないことを意味すると思います。
 
だからベネズエラの原油は大幅なディスカウントで取引されています。
 
ベネズエラのお隣にガイアナという国があります。そこでは近年、スターブロークというオフショア油田が発見され、ガイアナは急激なGDP成長中です。

スターブロークのAPIグラビティは38~40度で軽いです。また硫黄含有率の低い、甘い原油です。したがってプレミアムで取引されることが多いですし、テキサスのパーミアンのシェール石油に最適化された米国の石油精製施設との相性も良いです。
 
かつて米国はベネズエラと友好的な関係にありベネズエラ産の重油はテキサスやルイジアナの製油所で精製されていました。つまり米国内にベネズエラからもたらされる重油だけを専用に処理する設備があったのです。しかしベネズエラは世界の産油国で最初に資源ナショナリズムの嵐が吹き荒れ、米国との関係はどんどん冷え込みました。昔、ベネズエラに多大の先行投資をした米国の石油会社は莫大な損を被り、国際司法裁判所で係争関係にあります。だから米国内にあったベネズエラ重油の処理施設も大半が無くなっています。

なお、地層的にガイアナのスターブロークはベネズエラの海域にも続いていることが考えられます。したがって、エクソンやシェブロンが将来ベネズエラ側でもオフショア油田の探索に乗り出す可能性はじゅうぶんにあると思います。
 
でもレジーム・チェンジがあったから、いきなりベネズエラ産の重油が国際市場にたくさん出回るということはありえないですし、アメリカの石油会社は率直に言ってベネズエラ重油への投資には消極的だと思います。