バンコ・マスターの破綻について
2025年12月8日 16:51
先月、ブラジルの中堅銀行、バンコ・マスターが経営に行き詰まり、監督当局から事業清算を言い渡されました。同行は一時、高級ホテル、ファサーノを所有していた他、ロンドンで最も家賃の高いオフィスビル、22ビショップスゲートに入居するとも噂されており、とかく派手な経営で知られていました。
最初に断っておくとバンコ・マスターの破綻は同行に固有なリスキーな経営が原因で、ブラジルの金融システムへのシステミックなリスクも無いし、ブラジル経済への悪影響も無いと思います。
バンコ・マスターのリーダーは若手経営者、ダニエル・ヴォーカロです。彼はブラジルの不動産会社の御曹司で、一族の富で経営危機に瀕していたバンコ・マキシマを買収しました。
その後、ブラジルの国民の間で人気の預金商品、CDBを積極的にマーケティングし、どんどん業容を拡大しました。
CDBはCertificado de Depósito Bancárioの略で「変動利付き定期預金」だと思えば良いです。
CDBの利子は通常ブラジルの銀行間翌日物貸借金利(CDI)に連動しています。大部分のブラジルの銀行は預金者がCDBを購入すればそのお金をCDIで運用しているため、ノー・リスクです。
ところがバンコ・マスターの場合、CDIのレートより1.5%近く高いレートを消費者に約束していました。その関係で、よりリスキーな、流動性の低い投資対象(たとえばジャンク格の融資先)で運用していました。
CDBは米国の譲渡性預金(CD)と違い、償還前に引き出してもペナルティーがありません。だから預金者が解約に走ると流動性の低い投資対象に投資していたお金を回収することが間に合わなくなり、流動性危機が起こるわけです。
その結果、ブラジルの銀行団が共同で運営していた民間の預金保険機構、FGCF(Fundo Garantidor de Créditos)の基金の約4分の1にのぼる410億レアルを払い出すことになりました。
対比するために米国の譲渡性預金(CD)と比べると、CDは満期前に解約できないのに対しCDBは解約できます。
CDはFDICという米国連邦政府の預金保険機構により保護されていますが、CDBはブラジルの民間の銀行が設立した基金により保護されており、心もとないです。
バンコ・マスターは派手な経営で時代の寵児になったわけですが、明らかな金融犯罪を働いていたというよりはリスク管理に関するリテラシーに乏しい門外漢による経営で失敗したと思います。