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投資戦略

2025年10月21日 11:57

投資戦略をアップデートします。

■1929
最近、アンドリュー・ロス・ソーキンの「1929」を読了しました。アンドリュー・ロス・ソーキンはニューヨーク・タイムズのディールブックというウォール街に絡むコラムを長年担当してきました。それに加えCNBCのテレビにもレギュラー出演しています。彼はリーマンショックの後に「Too big to fail」という本を出し、ベストセラーになりました。
 
「1929」とは証券関係者なら誰しも大恐慌の発端となる「暗黒の木曜日」の年であることを知っています。
 
私が証券界に入ったのは1986年です。自分が唯一リアルタイムで体験していないのが1929年の暴落ですので、この本を読むことで「追体験」したというわけです。

脱線になりますが、1929年の暴落ではダウ工業株価平均指数の下落幅は−89%でした。1987年のブラックマンデーの際は−36%、2000年のドットコム・バブルが弾けた時のナスダック総合指数の下げ幅は−78%、リーマンショックは−57%です。
 
さて、そもそも1929年の大暴落につながってゆく1920年代のブームはなぜ起きたのでしょうか? それは自動車に代表される技術革新レバレッジ取引の隆盛が原因です。
 
米国における乗用車登録台数(累計)は下のチャートのように推移しました。

同じデータを単年度の自動車販売台数に直すと下のチャートになります。

1929年にかけて自動車販売台数は年間460万台に迫るわけですが、その後、株式市場の大暴落でクルマが売れなくなったことがこのチャートから読み取れます。
 
自動車ブームの火付け役になったのはフォードのモデルTであり、大量生産で販売単価を$850、今日のドル価値に直せば約2.7万ドルまで下げることで庶民にも手が届くようになったことが需要を喚起しました。
 
加えて分割払いが考案されたのが1919年頃です。1929年に販売された乗用車の75%は割賦で買われました。
 
ちょっと自動車の話に脱線しましたが、「1929」に戻るとアンドリュー・ロス・ソーキンは大暴落が起きた重要な原因のひとつにレバレッジ取引を挙げています。信用取引でポジションを建てることが大流行し、それが多くの人を破産に追いやったのです。
 
この本には大物銀行家、証券取引所トップ、投機家、実業家などいろいろな人が登場しますが、それらの登場人物の殆どが、一時的に巨万の富を築いていたにもかかわらず、結局無一文になり、悲惨な最後を遂げている点が印象に残りました。
 
シティナショナルバンク(=現在のシティグループ)の頭取だったチャーリー・ミッチェルは「サンシャイン・チャーリー」というあだ名で知られていた通り、いつも笑顔で楽観的な人だったそうですが、株式を一般投資家に大量販売するビジネス・モデルを極めた人です。「株式投資の大衆化、民主化!」を掲げたわけですが、その裏で自分の持ち株をシティナショナル銀行に買い取らせるなどのトリックを使ったことが発覚し、大恐慌以降は「暴落を招いた主犯」としてターゲットにされ、訴追されました。
 
ウイリアム・デュランはゼネラル・モーターズを始めた人で、ビュイック、キャデラック、オールズモービルなどのブランドを寄せ集め、巨大自動車メーカーにしました。その後、資金繰り困難に陥り、銀行団に持ち株を明け渡しますが、シボレーという新しい会社を興すことで再起し、そのシボレーをゼネラル・モーターズに売り渡し、大富豪になります。しかしその後株式投資で殆どの財産を失い、無一文で死にました。
 
リチャード・ウィットニーはニューヨーク証券取引所の会頭を務め、1929年の大暴落時には自らトレーディングフロアに歩み出てブルーチップ銘柄に次々に買い注文を入れ、大衆のパニックを鎮めようとした人物です。しかし彼個人の証券取引はハイレバで、ニューヨーク証券取引所の社員の未亡人に対する恩給を払うために設立された基金のカネを着服し、刑務所送りになりました。

1929年のニューヨーク市場を空売りし大儲けした投機家ジェシー・リバモアですらその後の一進一退のマーケットで投資資本を全部消耗してしまい、最後は拳銃で自殺しました。
 
このように「技術革新+レバレッジ」が1929年の大暴落の原因となったわけですが、今日もAIバブル+株トレ・アプリの隆盛で当時とまったく同じような熱狂が株式市場を包んでいます。
 
AIで最も成功している会社はChatGPTのオープンAIですが、もともとこの会社はマイクロソフトのアジュールというクラウド・サービスを無償で提供してもらうことで、実質的に100億ドル近い支援をマイクロソフトから受け、大規模言語モデルを完成しました。
 
マイクロソフトは早い段階でオープンAIと親密なビジネスを展開し、AIレースで先頭を走っていたわけですが、オープンAIの内情を詳らかに知る立場にあったマイクロソフトは次第にAIへの継続投資に懐疑的となり、オープンAIからの追加支援の要請を断りました。その後、オープンAIは台湾セミコンダクタに資本出資を請いますが、それも拒否されます。その後でソフトバンクと組むことが決まったわけです。結果としてスターゲートはAIブームに乗り遅れたオラクルなどの後発組によって押し進められており、しかもその資金の大部分は借入になる予定で、しかもオープンAIはまだ非営利団体から営利企業への転換すらカリフォルニア州の法律に阻まれて成就していません。
 
資金繰りの目処がつかない中で大量の半導体を購入しなければいけないということでエヌビディアはまずオープンAIに出資し、オープンAIはそのお金でエヌビディアからチップを購入するという循環取引を行っています。
 
つまりAIブーム全体が、最初はGAFAMの内部留保から先行投資という安全な資金計画から、だんだん綱渡りのやりくりへと変質していったのです。
 
■相場観
10月は厳しい相場になると予想します。いまはキャッシュポジションを高く保ち、何もやらないで下さい。
 
■銘柄
【金融】
BRAC BANK(バングラデシュ現地株)
 
■予想
2025年末のS&P500のターゲットは5500を予想します。(不変)
 
2025年末のドル円は128円を予想します。(不変)
 
2025年末の10年債利回りは3.9%を予想します。(不変)
 
2025年末のフェデラルファンズ・レートは3.50%を予想します。(不変)
 
2025年末の失業率は4.5%を予想します。(不変)
 
2025年末の消費者物価指数は2.7%を予想します。(不変)
 
2025年末のGDPは+0.5%を予想します。(不変)