個人投資家のトレーディング・ブームについて
2025年10月12日 19:03
私がアメリカに来た1988年頃、株式のトレーディングは機関投資家が中心であり、個人投資家の出る幕はありませんでした。
それが大きく変わったのは1990年代半ばです。インターネットの登場で株式のトレードもネットを通じて行えるようになりました。最初にこれを実現したのはイー・トレード、チャールズ・シュワブといった証券会社です。
1996年にデーテックというネット証券がアイランドECNをフル活用した執行を開始しました。アイランドECNとはナスダックとは独立したデジタル証券取引所であり、完全に自動化された、インターネットにネイティブなオーダーマッチングシステムを指します。
その特徴は、ミリセカンドという目にもとまらない速い執行、価格の透明性、トレーディング・フィーが安いこと、個人投資家と機関投資家を差別せず、誰もが平等にアクセス出来ることなどでした。
アイランドECNの競争相手としてはアーカ、インスティネット、トレードブックがありました。
1997年になると個人投資家のオンライン・トレーディングが爆発的に増えました。
1998年にはSOESバンディッツと呼ばれる、ナスダックの小口注文の強制執行義務を利用したバンディッツ(盗賊)のような自動トレードで稼ぐ個人や小さな会社が登場しました。
かつてナスダックはロバートソン・スティーブンス、モンゴメリ証券、ハンブレクト&クイストなどの引受業者が、自分たちの引受けた企業のマーケット・メーキングを行っていました。そこでは小口のまばらな注文には注意を払わず、まとまったサイズの、機関投資家のオーダーにフォーカスして執行してゆく手法が取られました。つまりナスダックそのものが「閉じたクラブ」のような様相を呈していたのです。
ナスダックのマーケット・メーカーは、小口の注文に関しては自動的に約定を成立させることを義務付けられていました。
マーケット・メーカーは手動でBid、Askの建値を入力していたので、時としてその建値の更新が遅れ、その非効率をSOESバンディッツが突いたのです。具体的にはボンヤリしていて建値の更新が遅れているマーケット・メーカーのところで小口の約定を作ってもらい、それとほぼ同じタイミングで別の証券でそのポジションを売り抜けるわけです。これはマーケットの非効率をアービトラージしていることに他ならないので違法ではありません。
このような小口のトレードはしばしばボラティリティを増幅させる原因となりました。不安→強欲→パニック……というようなトレーダーの感情のサイクルを短くしたのです。
小口のトレードが時としてボラティリティを増幅させることは今日でも起きています。
これに加えてそれらのトレーダーはレバレッジを用いていたのでこれも価格の変動が増幅される結果をもたらしました。
現在は株トレアプリを使ったゼロ・コミッションのトレードが大人気でロビンフッドのような会社がどんどんシェアを伸ばしています。
またオプション取引、暗号資産などのハイリスクでレバレッジがかかったトレードが人気です。
個人投資家はレディット、ディスコードなどを使って情報交換し、ミーム株のようなファンダメンタルズにカンケーない理由でオモチャにされる株をトレードすることに熱中しています。
同じアプリで暗号資産と米国株を両方トレードできるプラットフォームも増えており、暗号資産で強制決済→退場ということになると株式のトレードにも影響が出ます。
今日の過熱気味のトレーディングの状況はドットコム・バブル崩壊時と同じと言えると思います。