非農業部門雇用者数の改訂のメカニズム
2025年8月2日 12:10
8月1日、米国市場が荒れました。
相場が荒れた理由は、非農業部門雇用者数(NFP)の数字、とりわけ既発表の5・6月分が25万人以上も下方修正されたからです。
そこでNFPが改訂される理由と、季節調整および2月の大規模改訂について解説します。
NFP統計は速報性を重視し仮集計の段階で公表されます。その関係で以下の理由で後日修正されることがあります:
遅れて提出された雇用データの反映
- 初回発表では、BLSが雇用主からのサンプル調査(約13万社)のうち約70%程度の回答に基づいています。この調査は私も会社を経営している関係で労働省から「これに答えるのはあなたの義務です!」というような脅しめいたメールが何度も届きます。何ページにも渡る面倒くさいアンケートなので、ついつい後回しにしてしまいます(笑)
- 数週間後には90%以上が揃うため、第1回・第2回の改訂が行われます(通常、翌月とその翌月)。
行政記録などの補助データとの整合性
- 雇用保険、税務などのデータが出そろった段階で、統計の信頼性が高まり、再度見直しがされることもあります。雇用保険は雇用者が支払う義務があるので、たとえば中小企業の場合、ペイチェックスのような給与計算代行業者が自動的に計算し、支払います。その関係でアンケートよりずっと正確なデータが得られるのです。
次に季節季節調整の役割ですが、労働市場は以下のような季節要因で変動します:
- 夏の学生アルバイトの増加
- 年末商戦に伴う小売業の雇用増
- 建設業の冬季停滞 など
これらを補正しないと、実際の経済動向が見えづらくなります。したがってBLSは、「季節調整済(seasonally adjusted)」と「非調整(not seasonally adjusted)」の両方を発表しています。季節調整は 過去数年のパターンに基づく統計モデルであり、新たな経済環境(たとえば新型コロナなど)ではパターンの変化に応じて再調整が必要となることもあります。
それからなぜ毎年2月に大幅改訂が行われるのか? ですが、2月の発表には、以下の2つの重要な恒例改訂が含まれます:
年次ベンチマーク改訂(Annual Benchmark Revision)
- 政府の雇用保険記録など、より完全なデータに基づいて、過去1年間のNFPが見直されます(対象は前年4月から当年3月まで)。
- 毎年秋に収集された情報に基づき、2月発表時に反映されます。
季節調整のリベース
- 毎年、最新の経済状況を反映するために季節調整モデルが再計算されます。
- 新たな年の追加やトレンドの変化に対応するため、2月に多くの系列が一斉に更新されます。
以上がNFPが改訂されるメカニズムですがこのようなやむを得ない改訂の背景に関する労働省労働統計局の説明、ならびに市場との対話はハッキリ言ってとても悪いです。それが情弱達による「陰謀論」が跋扈する原因になっているとすら言えます。
さらに言えばパウエル議長は普段から「データ次第!」ということを強く主張しているわけですが、ハード・データにすら上で説明したような重大なニュアンスがあり、大幅に改訂されたときは連邦準備制度理事会が理解してきた経済のナラティブそのものが崩れてしまうことすらもある…言い直せばデータがグラグラすれば、FRBの政策金利の手綱さばきすら心もとなくするリスクを孕んでいるということです。