バングラデシュ Z世代が起こした「7月革命」から1年、来年の総選挙を経てガバナンスの向上が期待される
2025年7月3日 05:38
いまから1年前、バングラデシュの大学生を中心としたデモ行進が引き金となりバングラデシュの政府が転覆しました。与党アワミ連盟のシェイク・ハシナ首相がインドに亡命、現在、バングラデシュはノーベル賞を受賞したムハンマド・ヤヌス首席顧問の暫定政権となっています。
選挙法が改正され、2026年4月に総選挙が行われることが発表されています。
現在、アワミ連盟は選挙活動を禁じられているため、野党だったバングラデシュ民族主義党(BNP)が最大党になる公算が高いです。その次はイスラム協会(JI)、そして去年の革命の後で大学生を中心として作られた国民市民党(NCP)も一定の存在感を示すことが予想されます。
もっともありそうなシナリオはBNPとNCPが連立政権を形成するということですが、まだ時間があるので今後どのように様子が変わるか注目したいと思います。
一方、バングラデシュ中銀のアサン・マンスール総裁は革命後に中銀総裁に就任しましたが、次々に適切な処置を施し、経済危機を回避しました。
バングラデシュといえば既製服(RMG)の縫製で有名です。
世界のRMG市場は1.06兆ドルで年率8.1%で成長しています。7年後には2兆ドル市場になると言われています。
比較のために世界のIT市場を例に出すとその規模は11.2兆ドルで年率10%で成長しています。この中にはAIへの設備投資も含まれています。
もうひとつ、世界の旅行市場の例を出せばその市場規模は8.9兆ドル、年率4.5%で成長しています。
既製服市場の話に戻れば、ハイテクでも無いのに高い成長率を示している理由として世界でミドルクラス(中流)と呼ばれる層が増えており、可処分所得の上昇とともに既製服を買い求める新興国、フロンティア市場の庶民が増えていることが指摘できます。
都市化の進行とともに「洋服は作るものではなく買うもの」という意識が定着しつつあります。Eコマース、ZaraやH&Mに代表されるファスト・ファッションの流行もRMGのボリューム増に寄与しています。
RMGの輸出市場を見るとマーケットシェア・リーダーは中国で年間1,590億ドル(テキスタイルを除く)です。成長率は0.3%に過ぎません。中国は米国から55%の関税を課せられていますしRMGの労働者の賃金は月700ドル前後なので、急速に競争力を失いつつあります。
二番目に大きなプレーヤーはバングラデシュで年間470億ドルを輸出していて成長率は8.8%です。労働者の賃金は月105ドルです。
3番目はベトナムで年間420億ドル輸出しており、成長率は11%です。賃金は月270ドルです。
4番目はインドで年間170億ドル輸出しており、成長率は12%です。賃金は月225ドルです。
すると仮に高い関税率がバングラデシュ製品に課せられたとしても依然としてコスト面での競争優位は揺るがないことがわかります。
課題としては物流インフラが貧弱で、納期などの面で見劣りすることが指摘できます。
ここまでの話をまとめればRMG市場は高い成長率を示しており、しかもマーケットシェア第一位の中国がシェアを低下させはじめており、競争地図が激変する可能性を秘めています。バングラデシュはコスト面で圧倒的に有利な立場にありマーケットシェア・ゲインが期待されます。
バングラデシュの輸出に占めるRMG比率は84%と極めて高いです。外貨取得という観点からはバングラデシュはドバイなどで働く出稼ぎ労働者からの送金が急増しており、これもバングラデシュ・タカの下支え要因と言えます。
衣食住は我々の消費生活の根幹を成しますが、そのうちの「衣」で安定した競争力を維持しているバングラデシュは成長のロードマップを描きやすい国と言えます。
実際、国際通貨基金の世界経済見通し(WEO)のデータベースで見ると過去32年間、バングラデシュは7.6%で成長してきました。これは世界でトップクラスと言えます。
バングラデシュの株式市場は株価収益率(PER)8.8倍、株価純資産倍率(PBR)1.1倍で取引されています。ちなみにインドのPERは23.3倍、PBRは3.6倍です。
バングラデシュの国民は勤勉でマイクロファイナンスという、なけなしの資本を効率的にはぐくむやり方で草の根的な成長を遂げてきました。同国の都市化率は40.5%で、今後、農村から大都市へ人口が流入すると労働生産性の向上が期待できます。また平均年齢29.2歳とアジア諸国の中で最も若い人口構成も魅力です。
バングラデシュは米国に上場されているETFやADRがありません。その関係で現地の証券会社に口座を開く必要があります。僕の場合、リサーチに強いBRAC EPL証券を使っています。