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ホルムズ海峡で起きたタンカー衝突事故はGPS電波妨害が原因 ジャスト・イン・タイムの石油製品輸入には限界がある

2025年6月18日 05:12

6月15日夜1時頃、ホルムズ海峡のすぐ外で原油タンカー、フロントイーグルがもうひとつのタンカー、アダリンと接触、フロントイーグルが炎上しました。

この事故に先立ってフロントイーグルのGPSシステムは誤った位置情報を発信、GPSが全然信用できない状態だったそうです。
 
その理由としてイランのバンダル・アバース付近から強力な妨害電波が発せられていることを指摘する向きがあります。
 
フロントイーグルの船主であるフロントラインは「ホルムズ海峡を通過する仕事はもう請けない」と発表しています。
 
GPS妨害電波はウクライナ戦争、イスラエル上空、インド・パキスタン戦争でも使用されました。
 
近年、タンカー市場では構造的な変化が起きています。すなわち原油タンカーの新造船の割合が低下し、原油を精製した後の付加価値の高い製品タンカーの割合が増えているのです。製品タンカーは、より爆発しやすい積み荷を運んでいるため衝突事故が起きるとダメージが大きいです。
 
近年、欧州大陸では旧式で中途半端な規模の精油所がどんどん閉鎖されています。その代わりクウェートのアルズール精油所やアラブ首長国連邦のルワイ精油所などの巨大な精油所で石油を精製した後、完成品を製品タンカーで輸出するという方法が好まれています。これらの精油所はホルムズ海峡の内側のアラビア湾に面しているので航行の安全が確保できなくなると供給が不安定になりやすいです。
 
昔は消費地に近い場所に原油タンクを建設し石油を備蓄するとともに消費地の近くの精油所で精製するというのが一般的でした。しかし先進国の住民は自分の住んでいるところに近い場所に精油所が出来ることを嫌っており住民運動などが起きやすいです。IMO2020などの環境基準が強化されたことも硫黄含有率が高い原油をまず輸出し、先進国でそれを精製するというビジネスモデルのコストを高いものにしています。その関係でクウェートやアラブ首長国連邦のような原油の生産地に精製も任せてしまうということが流行しているのです。
 
原油は長期にわたって備蓄するのに適しています。これと対照的に
ディーゼル、ジェット燃料などは「賞味期間」があり、保存には向いていません。そこでジャスト・イン・タイム方式
で輸入することが増えています。
 
今回のイスラエル・イラン戦争は、この石油製品のジャスト・イン・タイム輸入というビジネス・モデルの持つ脆弱性をあばいたわけです。