【株式投資を根本からやり直すシリーズ 1】株式とはなにか?
2025年6月7日 20:22
このシリーズのねらい
このシリーズは既に僕の弟子になっているある若者に対するレター形式で書かれています。全部で10回あります。
会社を興す
あなたの場合、すでに起業の経験があり、あなたのスタートアップ企業の27.27%株主です。もう忘れているかも知れないけれど起業に際してあなたが出資したお金は$109でした。
いまあなたは別の国に住んでいる関係で日々の業務にはタッチしていないけれど、あなたが始めた会社の事業が大きくなっていることは、事業拡張に伴う会社の定款変更を承諾するため領事館までわざわざ行ったことからもよく把握していると思います。
現在の売上トレンドは年商5万ドルですが半年後には間違いなく年商10万ドルのペースになると思います。
通常、健康にまつわるリアル店舗のビジネスの立ち上げ当初では事業価値として売上高の1倍から2倍程度のマルチプルを付与するのが一般的です。
すると年間10万ドルの売上高に1.5倍のマルチプルを当てはめ、それをあなたの出資比率である27.27%で計算すればあなたの持ち株の価値は$40,905という計算になります。あなたの投資は375倍になったというわけです。
これはあくまでもペーパー上での試算に過ぎず、実際にはあなたの株式を譲渡しようとすると買い手が見つけにくい場合もあります。このような状態を流動性が低いと表現します。
株式とはなにか?
株式とは資金を集めるために発行する証券を指し、それを保有する人、つまり株主は会社の所有者と言えます。株主には配当を受ける権利や株主総会での議決権があります。
企業は株式を上場する場合もあります。これは株式を売りたい、あるいは株式を買いたいという人たちが出会う場であり、上で言及した流動性の低い状態を是正するひとつの方便だと理解できます。
たとえばスターバックスの場合、発行済み株式数は11億株なのであなたが仮に$9,000を投じて100株を90ドルで購入したら、あなたの持株比率は0.009%になります。
ここまでの話をまとめると、あなたが自己資本を出資して始めた会社の企業価値は375倍になりました。リターンが大きい理由はスウェット・エクイティ、すなわち会社を立ち上げる際の様々な苦労をあなたが実際にしたことによる部分が大きいです。また事業が失敗するリスクも極めて大きかったです。
一方、スターバックスのような上場企業に投資した場合、それが50%値上がりすることもあるだろうし、逆に値下がりすることもあると思います。いずれにせよ上場企業で10倍のリターンを得られればそれは投資としては大成功です。そういうケースは極めて稀です。
なぜ大金持ちには自分で事業を始めた人が多いのか? ということは、上に書いたような違いから生じるわけです。
でも自分で会社を始めることは人生で何度も出来ることではありません。だから既に他人が始めた会社で、株式市場に上場されている企業に投資することで受け身の立場で値上がり益や配当を享受するというやり方も常に並行して実践すべきです。
評価基準
ところであなたの所有するスタートアップ企業の事業価値として売上高マルチプルの1.5倍を上のケースでは当てはめました。これはPSR (Price to sales ratio) という概念です。
これに似た概念でPER (Price to earnings ratio) というものもあります。これは株価を一株当たり利益(EPS)で割り算して求めることが出来ます。
いまPSRやPERが高ければ即座に「それは割高だ!」と決め付けるわけにはいきません。なぜなら、普通、高い評価を得ているモノにはそれなりの理由があるからです。
一例としてハンドバッグの世界では圧倒的な希少性を持つエルメスが常にトップであり、次にシャネル、ルイ・ヴィトンという序列があります。
言い換えれば割高なものは常に割高で買われ続けやすいのです。
そのことをわきまえず、ただ単純にAという株とBという株を比較してBの方が安いのでこちらを買うというのは意味の無い投資判断です。
投資の世界では「モノの値段を識る」ということが極めて重要になります。言い換えれば「価値あるものは、常に価値がある。価値のないものは、常に価値がない」のです。
やっかいなのは、そこに「流行」という現象が絡んでくると本来永続的価値が無い投資対象を「価値がある!」と勘違いする投資家が沢山出る点です。これはFad、束の間の熱狂に過ぎません。
あなたはいまブランド企業に勤め「ブランドは一日にして成らず」ということを痛感しているはずです。業界における序列は、カンタンにひっくり返せるようで、ひっくり返せない。ブランド・リーダーが王座を守り続けることは並大抵の努力ではないのです。顧客は、それに対して高いお金を支払っているという風にも言えると思います。
してみればマルチプルという概念は奥が深く、ビジネスをよく理解しなければ誤った投資判断を下しやすいことがおわかり頂けると思います。