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そろそろ「ニック、居る?」に注意

2025年6月2日 13:04

そろそろ「ニック、居る?」に注意する時が来ました。

これは連邦準備制度理事会(FRB)が金利政策の大きな転換をおこなう前に「したごしらえ」として先ず市場にFRBの意図をリーク、市場参加者の反応を見る行為を、僕が劇画チックに形容した表現です。
 
ニックというのはウォール・ストリート・ジャーナルのFEDウォッチャー、ニック・ティミラオスを指します。
 
普通、FRBはこの手の「小手調べ」をする際、ウォール・ストリート・ジャーナルを使います。
 
今後の連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは以下の通りです。CMEフェドウォッチのコンセンサス予想を添えておきます。
 
6月18日 98.7%の確率で現行の4.25%が維持される
7月30日 76.3%の確率で現行の4.25%が維持される
9月17日 57.4%の確率で0.35%の利下げが実施され4.00%へ
10月29日 39.5%の確率で3.75%、40%の確率で4.00%
12月10日 39.9%の確率で3.75%
 
すると市場参加者は最初の利下げを9月17日と見ていることがわかります。政策金利をこれまでの「水平」から「下」へ方向転換するのは大きな決定なので、FRBが突然、それを行うことは稀です。まず市場参加者にヒントを与えます。その常套手段が「ニック、居る?」とFRBの側からメディアに対してプロアクティブにリーチ・アウトし;
 
ニック:「あ、議長!お久しぶりです」
ジェイ:「うん、久しぶりだね。どう? 最近、元気にしてんの?」
ニック:「はい、おかげさまで」
ジェイ:「そうか、元気にしてるのか…それは何よりだね」(ガチャン!)
 
というようなやり取りがあるわけです。いきなり電話が切れてFEDウォッチャーは(あれは…一体、なんだったんだろう?)という風にキツネにつままれたような困惑を覚えるわけです。
 
(あっ!ひょっとして議長は…「察しろよな!」と言っているのかも!)
 
とFEDウォッチャーは「勘を働かせ」、観測気球を上げるような記事を書くわけです。
 
このようなことはもうしばらく起きてません。なぜなら最後にFRBが利下げしたのは去年の12月であり、それ以降、ずっと米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは水平飛行となっており、FEDウォッチャーは「用無し!」の刑に処されているからです。
 
5月29日、FRBのパウエル議長がトランプ大統領に呼ばれてホワイトハウスで会談しました。その会談の後、FRBは声明を出し「今日パウエル議長が大統領の招きでホワイトハウスに赴きFRBの金利政策はあくまでも入ってくるデータ次第で決め、政治的圧力は一切受け付けないことを大統領に説明した」と述べました。
 
ホワイトハウスも記者会見で「FRBが出した声明文を読んだ。そこに書いてあることは、正しい」とコメントしました。
 
これによってパウエル議長がトランプ大統領からの圧力に屈しなかったという事実が確立されました。そのことは逆説的なのですが、パウエル議長が今後自由に動けるようになったことを意味します。
 
6月18日のFOMCで利下げが発表される確率は0%です。しかし記者会見ではミョーにハト派的ニュアンスが出るリスクは、あります。言い換えれば7月30日のFOMCが「ライブ(なにか重要なことが出る可能性がある)ミーティング」になるというオーラが、わざと醸し出されるわけです。
 
FRBはこのようなリークでは殆どウォール・ストリート・ジャーナルを使います。それはWSJが「カタブツ」だからです。つまり記事が硬派であり、余計な修飾が少なく、小手調べが引き起こしてしまうかも知れない、思わぬ誤解、曲解の余地が最小限だから。
 
もちろんWSJ以外のFEDウォッチャーに全然その番が回ってこないか? と言えばたまにはそういうリークが他の報道機関に出される場合もあります。一例としてコルビー・スミスはパウ爺のお気に入り。彼女は英フィナンシャル・タイムズ時代に良い仕事をしており、今年からニューヨーク・タイムズのFEDウォッチャーをつとめています。NYタイムズに移ってからは未だ出番らしい出番はありません。
 
NYタイムズには同じくFRBから気に入られていたジーナ・スミアレックというFEDウォッチャーが居たのですが、彼女は現在、NYタイムズのブリュッセル支局長として欧州連合をカバーしています。メディア界ではしばしは「ター・ヒール」すなわちコールタールで黒ずんだ踵→ノースカロライナ大学チャペルヒル校卒業生が活躍しているのですが、彼女もそのひとり。
 
一方、コルビー・スミスが抜けた後を埋める格好で長い間欧州中央銀行(ECB)をフォローしていたクレア・ジョーンズがフランクフルトから今年の3月にワシントンDC支局に着任しています。
 
まとめるとFEDウォチャーとして重要な順位は;
 
1. ニック・ティミラオス
2. コルビー・スミス
3. クレア・ジョーンズ
 
だと思います。
 
**6月のFOMCでは政策金利の変更はありません。ただし将来の金利政策に関しては少し「したごしらえ」してマーケットをほぐす動きが出る可能性はあります。**そのシナリオでは、ドル安を意味します。