米国が長期ソブリン格付けトリプルAを失った 今後どうなる?
2025年5月17日 13:30
米国が長期ソブリン格付けトリプルAを失いました。
金曜日、マーケットが引けた後、格付け機関のひとつ、ムーディーズが米国の長期ソブリン格付けをこれまでのAaaから一段階引き下げ、Aa1(ダブルAワンと読みます)に引き下げ、さらにアウトルックを「ネガティブ」としました。これは今後もダウングレードのリスクがあることを仄めかす表現です。
実は格付け機関が米国の長期ソブリン格付けをダウングレードするのはこれが3回目(そして最後の一社)であり、既にフィッチ(2023年に剥奪)とS&P(2011年に剥奪)は一足先に米国の長期ソブリン格付けをダウングレード済みです。
投資コミュニティの考え方として「3社全部からダウングレードされない限り、最上の格付けを付与している格付け機関の見解をコンセンサスと見做す」という暗黙の了解があります。だから昨日までは米国はトリプルAでした。でも今日からはダブルAプラスになるわけです。
なぜダウングレード?
それは米国の財政は皆さんが考えているより遥かにぐらぐらしていて、サステイナブルではないからです。足下の米国の財政赤字はGDPの−6.2%です。(ちなみに日本も−5.5%と悪いです。ところで今年の相場は財政赤字が少ない国の株を買っていれば楽勝でアウトパフォームできました)
米国の連邦政府は連邦債務上限の引き上げ期限を今年の8月に迎えるため、その前に議会がいま「大きくて美しい財政法案」を大急ぎで可決しようとしているのですが、金曜日の段階では下院共和党の仲間割れが生じ、法案を可決できるだけの票数を集めることに失敗しました。
なかでも難しいかった箇所はSALT(ニューヨーク、カリフォルニアなど高い州税を払っている州に住む国民への連邦税の控除)を現行の$10,000から$30,000へ引き上げるという条項に関し、意見対立が噴出しました。具体的には高州税の州を代表する議員は「そんな金額じゃ足らない!」と主張する一方、フロリダ州に代表される州税が無税、もしくは低い州の議員は「なぜカリフォルニアやニューヨークの放埒な財政の尻拭いをわが州の州民がやらないといけない理由があるの?」と反発したわけです。つまり州の間での争いで、連邦政府の財政法案が沈没している状況という風に形容出来るでしょう。
もし8月に議会が夏休み入りする前に連邦債務上限を引き上げられなければ、米国はテクニカル・デフォルトします。
ムーディーズによれば米国の財政赤字は2035年までにGDPの9%に迫る水準まで悪化するだろうとしています。「税の徴収が、弱い!」という指摘です。この部分を改善する意図で、トランプは中国製品などに高い関税を課すことを打ち出したわけですが、それは株式市場の急落で頓挫しました。だから中国への関税率は145%→30%へ下げられています。これはもちろんグッドニュースなのですが、米国政府は関税以外の方法で財政を建て直さないといけないことは自明であり、「ドル売り・米国株売り」の基本構造は、なにも変わらないことは言うまでもありません。
米国がトリプルAを失ったのは、第二次世界大戦後初です。
5月19日(月)は、この歴史的イベントに敬意を表する格好で、マーケットが荒れることを覚悟する必要があります。
いまの時点では「米国株は4月7日に大底を付けた後、サマーラリーに突入し、8,9,10月あたりはとてもキツイ相場になる」という相場観を堅持します。でも夏から秋にかけての苦しい相場が、金曜日の引け後のムーディーズのダウングレードで繰り上がってしまったのかも知れないので、相場をしっかり観察する必要を感じます。
ちなみに僕はこのような愁嘆場を年初から予想していたので、いまはドイツ、バングラデシュ、ラテンアメリカなどの株式に逃げていて、アメリカ株はボーイングだけにしてあります。