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LPP

2025年5月4日 05:35

LPP(LPP:WSE)は1991年にポーランドで創業されワルシャワ証券取引所に上場されているファッション小売業者です。

現在の同社の主力ブランドは**シンセイ(Sinsay)**です。これは日本のファースト・リテイリングの「GU:ジーユー」に近いファストファッションの小売店です。売上規模的にもGUとほぼ同じです。
 
GUとシンセイを比較します。
 
GUは2006年に始められたコンセプトで、シーズン終了時になるべく在庫を全部売り切ることを目標としています。その実現のために最初に個々の商品の販売価格を決め、それから逆算するカタチで商品開発を行います。最多価格帯は2000円です。デザインはミニマリスト的で品揃えはセレクティブです。売れ残り商品のディスカウント幅は20~30%です。
 
シンセイは2013年に始められたコンセプトで、流行のスタイルをどんどん採用し、特定のアイテムをわざと多めに仕入れ、シーズンの終了前にアグレッシブに値引きします。品揃えは幅広いです。ディスカウント幅は30~80%です。H&Mと同じような品揃えで、しかもH&Mの半値でそれらの商品を売るということを謳い文句にしています。すでにシンセイはLPPの旗艦ブランドに育っており、アグレッシブな出店計画を持っています。**2024年末のシンセイの店舗数は1,512で、向こう3年間でこれを6,000店舗へ持ってゆく計画です。**去年は1年間で564店舗を新規に開店しました。下のパネルの右側がシンセイ、左側が伝統的なバリュー・リテイラーの店舗です。シンセイはスッキリとした商品のディスプレイになっていることがわかります。

(出典:LPP)

(出典:LPP)

シンセイはポーランドの他にも;
 
ルーマニア
ブルガリア
クロアチア
セルビア
ボスニア&ヘルツェゴビナ
ギリシャ
イタリア
 
などに展開しています。いわゆるバルカン半島での出店が目立ちますが、その理由は;
 
1.     シンセイの店舗規模はわざと小さく
2.     内装をシンプルにして出店コストを抑え
3.     まだ西側の大手ブランドが進出していない地方の町にも出店する
 
ということを狙っているからです。
 
シンセイは1平方メートル当り毎月$200ドルを売り上げています。これは一見するととても小さい数字のように思えるのですが、バルカン半島の地方都市は出店コストが極めて低いため、その程度の売上高でも十分採算が取れます。
 
比較のために他社の数字を出すと;
 
ザラ $800~$1500
H&M $400~$800
 
という感じです。
 
平均的なシンセイの店舗の売り場面積は1,000平方メートルです。すると月次売上高は$200,000になります。
 
店舗の賃貸料は$7500、スタッフの給与は$10000、在庫コストは$90000、その他経費は$5000です。
 
いまシンセイのグロスマージンは55%なので固定費($22500)÷0.55=$40900を売り上げればブレークイーブンする計算になります。
 
すると$200,000売り上げればセイフティー・マージンは5倍弱ということになります。
 
さて、LPPはシンセイの他に「リザーブド」、「ハウス」、「クロップ」、「モヒート」などのブランドを展開しており現在シンセイはLPPの総売上高の約50%を稼ぎ出しています。しかし他のブランドは今後あまり新規出店しない計画で、もっぱらシンセイに注力する考えです。3年後にはLPPの総売上高の75%をシンセイが占める事業計画になっています。その時点でLPPの総売上高は2024年の2倍という計画です。

(出典:LPP)

バルカン半島+ルーマニアのGDPは5290億ドルで、タイランドにほぼ同じです。ただ西側ブランドは殆ど進出していないため、ブルーオーシャンです。
 
トランプ関税でTEMU、SHEINなどのファストファッションが米国市場が締め出される中、中国やバングラデシュは余った生産力を世界の他の地域に振り向ける必要があります。それはシンセイにとって仕入れコストがいっそう安くなる可能性があることを示唆しています。
 
 
まとめるとLPPは東欧、バルカン半島といういままで余り注目されてこなかった市場にファストファッションを持ち込もうとしており極めてアグレッシブな出店計画を持っています。もしこれがまんまと当たれば急成長する可能性があります。