もしこれ以上債券市場が荒れた場合、FRBがすべきことは利下げではなく、SRFの提供、オペ(OMO)、QTペースのさらなる減速だ
2025年4月9日 20:16
債券市場が荒れており、一部の市場参加者は「いますぐ利下げすべきだ!」と主張しています。そうしたいのはやまやまですが、関税は将来インフレをもたらすので、いまの場面で利下げすると、かえってとんでもないことになる恐れもあります。しかしFRBにできることは利下げ以外にもあります。
順番に説明します。
まずなぜ今、債券市場が荒れているか? と言えば、それは折からの市場のボラティリティの増加でヘッジファンドが好む**「ベーシス・トレード」が崩れてきているからです。
ベーシス・トレードとは、同じ種類の債券間での価格差をアービトラージ(サヤ取り)するトレード手法を指します。一例として米国債を買い持ちすると同時に割高に取引されている先物をショートすることで、僅かな価格差をGETする…というような取引が挙げられます。
その価格差は本当に僅か(basis=0.0001)なので、普通、そのサヤ取りをするためには大きなレバレッジをかけます。つまり借りてきたお金で、そのような巨大なポジションを建てるわけです。
ヘッジファンドは普通10倍から50倍のレバレッジをかけてこのようなトレードを行います。
一見するとベーシス・トレードは片方でロング、もう一方でショートするので、価格へのインパクトはニュートラルのように思えます。
しかし実際には微妙な流動性のミスマッチが非対称的スリップ(asymmetric slippage)をもたらします。
レバレッジをかける際、レポ市場からお金を引っ張ってくるので、金融機関がレポ市場をタイト化すれば、ベーシス・トレードはたちまち立ち行かなくなります。
レポ市場では貸し手が米国債を担保にオーバーナイトで資金を融通します。市場が荒れて貸し手が「もっと担保を積んで!」と要求すれば、それに応えられないヘッジファンドはポジションを解消せざるを得ません。
レポ市場は過去にリーマン・ショックのような金融危機、新型コロナのような健康リスクが生じた際に機能不全に陥りました。
レポ市場は借り手と貸し手の1対1の合意です。銀行がそのヘッジファンドの健全性に対し疑心暗鬼になった場合、貸したがらなくなります。
加えて米国債価格が激しく変動すると、貸し手は「もっと担保を!」と要求します。
通常であればベーシス・トレードがヘンになれば、そのタイミングでFRBが利下げを開始すればよいです。
しかし今は昨夜から相互関税がキックインしたばかりで、これからインフレ圧力が強まることが予想されるので、おいそれとは利下げ出来ません。
そこでFRBが出来る次善の策としてはスタンディング・レポ・ファシリティ(SRF)を提供することが考えられます。具体的には固定レートで米国債を担保にFRBがオーバーナイトの融資をすることを宣言するわけです。
もうひとつの方法はオペ(Open Market Operations/Term Repos)**、つまりファンディング市場に直接流動性を注入する方法があります。
最後に、これは既に先の連邦公開市場委員会のときに発表済みですが、QTのペースを減速するというやり方もあります。
いずれにせよ「利下げせざるを得ない!」というのは短絡的な考えで、それ以外にもFRBが出来ることは上に例示したように幾つか存在するわけです。