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トランプ政権の傍若無人な振る舞いは欧州の戦後体制の崩壊を示唆

2025年2月19日 20:12

第二次大戦後、ヨーロッパは物理的にも経済的にも荒廃しており、ソ連を中心とする東側との対立構造が深刻化していました。アメリカは自身の安全保障・経済的利益のためにも、西欧が共産圏に靡かないように支援を行う必要がありました。

そこで経済復興、軍事安全保障、利害の調整機能の3つを整える必要がありました。
 
経済復興に関しては1948年のマーシャル・プランで欧州にお金を渡し、復興を援助しました。軍事安全保障に関しては1949年の北大西洋条約機構(NATO)の結成により集団防衛の契りが交わされました。各国間の利害の調整機能としては欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を結成することでドイツに偏在している石炭、鉄鋼関連資源を積極開発すると同時にドイツがそれを独り占めして再び軍事大国化することに歯止めをかける生産調整メカニズムを設けました。ECSCは後に欧州連合(EU)に発展しました。
 
しかるにこれらの「三点セット」はいずれもアメリカの欧州における戦後体制を押し進めるための道具に他なりませんでした。
 
さて、ロシアの軍事予算はNATOの10分の1です。つまり「ロシアの脅威!」が声高に叫ばれているものの、それは長年復唱されてきたお題目に過ぎず、実際にはロシアのパワーは大きく後退したのです。一方、ドイツやフランスなどのNATOメンバー国の防衛予算は、NATOが推奨するGDPの2%を大きく下回っており、アメリカは「ドイツやフランスはNATOに貢献していない!」という不満を持っています。
 
つまりマーシャル・プランという支援金の無償供与で欧州経済は息を吹き返したわけだけれど、そういう
過去の恩義に見合うだけの貢献をドイツやフランスはしていない
というのがトランプ政権の考え方なのです。
 
だからウクライナ停戦交渉でもアメリカはEUやウクライナをすっ飛ばして直接ロシアと交渉しているわけです。
 
EUは外交面で協調し、一本のまとまった意見を出すことはしてきませんでした。それもそのはず、そもそもEU自体がもともとアメリカの欧州における戦後体制実現の「道具」に過ぎなかったわけだから、EUのスタンスとは、とりもなおさず「アメリカの意向」をなぞったものに過ぎなかったのです。
 
しかし、あれから74年の歳月が流れた今、アメリカはこの「三点セット」の役目は終わったと考えています。
 
してみれば今我々の眼前で起きているアメリカの「よそ見」は、ベルリンの壁崩壊に匹敵する地政学上の一大イベントと考えられなくもないのです。
 
するとウクライナがNATOに将来の安全の拠り所を求めるのは間違っているのかも知れません。EUに加盟したからといって安泰ではないでしょう。NATO諸国の軍事予算の68%を占める米国とどう付き合ってゆくか? を考えないといけない時が来たと思います。