トランプの交渉スタイルを理解すればトレードが上手くなる
2025年2月6日 03:48
「ディール重視」のトランプ大統領はどのような交渉スタイルを持っているのでしょうか?
トランプは先ず「俺が大統領になったら初日にカナダとメキシコに25%の関税をかける!」という風に、わかりやすく、しかも無理のある難題を吹っ掛けます。
これはビジネススクールで教える交渉術ではアンカリング(Anchoring)と呼ばれる定石の手法です。つまり交渉の火蓋を、ありえない高い地点から切ることで、相手は知らず知らずのうちに(そこが基準点か…それならそこを出発点としてどれだけ値切れるかが勝負だな)と思わせてしまう効果があります。
これは比較的短期間の交渉を行う際、とりわけ有効です。(もう時間がない!)という相手の焦りの中で交渉を有利に進めるわけです。
このオープニング・プライス(初期提示額)は相手の頭の中にある程度の予想範囲を植え付けてしまうという点で重要です。しかし(これ以上の無理な要求は、到底呑めないな)という交渉当事者同士のもつ限界値が存在します。その限界値は予約価格(Reservation Price)と呼ばれます。
(これを下回る条件なら、もう合意する意味ないじゃん?)
そういう風に交渉決裂の足切りポイントを自分の心の中で決めます。それのことをBATNA(バトナ=Best Alternative to a Negotiated Agreement)と言います。交渉がまとまらなければ、最善の「プランB」はこれだ…という撤退ラインと言い換えてもよいでしょう。
相手の思惑と自分の思惑…言い換えれば相手の予約価格と自分の予約価格との差…
これがバーゲニング・レンジ(ZOPA:Zone of Possible Agreement)になります。
トランプの場合、多くのケースで、上に書いたようなアメリカのビジネススクールで教えている交渉術をかなり愚直に当てはめています。
多くの市場参加者は、そのことに気付かず、トランプのオープニング・プライスを「妥結額」という風に勘違いし、慌ててトレードする傾向があります。
しかし政治の駆け引きでは単一の価格を巡っての交渉(distributive negotiation)はむしろ稀で、複数の要素、条件を包括した交渉(Integrative negation)である場合が多いです。その場合、「ここでは俺が折れるけれど、あそこではお前が譲歩しろ!」という持ちつ持たれつの落とし所に帰着する場合のほうが多いです。
交渉が暗礁に乗り上げそうになったら、納期、品質、アフターサービス、支払条件、追加オプションなど様々な条件を追加し、「この部分は呑めるけれど、あの条件は呑めない」という風なトレードオフを作ることで決裂を避ける努力をすることが出来ます。
また相手の立場を考え、「創造的な解決法」を挿入することも可能です。
いわゆる「Win-Win」の交渉結果を得るためには、そのような工夫が必要です。これはトランプも励行しています。
そういう交渉理論のイロハをわかった上で政治ニュースを読めば、ムダにパニックすることなくトレードできるようになります。