AIは素晴らしい。でもクリステンセンの定義する「破壊的イノベーション」ではない
2025年1月24日 20:18
僕はAIのファンで、毎日使っています。AIは素晴らしいと思います。
しかしクレイトン・クリステンセンが定義する「破壊的イノベーション」か? と聞かれれば、それは明らかに「NO」ですね。
まずクレイトン・クリステンセンが定義する「破壊的イノベーション」とは、エスタブリッシュされた企業が見向きもしない小規模で低性能な領域から、チンケな技術革新が始まり、それが既存市場を置き換えてしまうような革新的なアプローチです。
そこでは「安かろう、悪かろう」と嘲笑われていたお手軽で付け焼き刃的な解決法が「それでも十分に使えるじゃん?」と受け入れられ、やがてバカ高いソリューションを駆逐するわけです。
多くの生成系AIやLLMは開発コストが莫大で、スタート時から非常に高性能です。だから低価格、低性能、小規模路線とはまったく違うのです。
ただAIがクリステンセンの言う「破壊的イノベーション」の定義に当てはまらないからと言って、それが社会や雇用市場にダメージを与えないか? と聞かれれば、それはダメージを与えます。既に米国では大手弁護士事務所のパラリーガル、投資銀行のアソシエイトみたいなポジションは不要になっています。レインメーカーやコーリングオフィサーだけが今まで通り必要なのであって、「投資銀行のエクセル術兄ちゃん」はお払い箱でしょう。
ドットコムブームとの比較で言えば、当時は何も実態が無いベンチャーが、株式市場の期待感だけで莫大な資金を集め、「◯◯ドットコム」という名前で上場ラッシュしていました。ひるがえって現在のAIブームはマイクロソフト、グーグル、メタなどの大手企業が主導しています。
そこではごくひとにぎりのリッチな企業だけがLLMを構築することが可能で、その他大勢のスタートアップはAPI経由でそれらを使わせてもらう、いわば「お客さん」の側に過ぎません。
つまり**「AIファクトリー」を構築している大手企業は、それらの零細なスタートアップの「生き血」を吸うことを商売にしているわけです。
API経由でサービスを構築した企業の例としては;
ジャスパー
コピー・エーアイ
ライトソニック
ノーション・エーアイ
メム
などがありますが、いずれもちょっとした拍子にLLMを構築した企業そのものに、つまり「大家さん」にビジネス自体を盗まれてしまうリスクがあります。実際、ジャスパーは「チャットGPT無料公開!」のおかげで大打撃を受けました。
生成系AIの分野では、巨大言語モデルを開発・運用できるほどの資金力とGPU資源、研究者人材を持った大手企業の独壇場になりつつあります。APIを通じてスタートアップが機能を利用しやすくなった一方、最終的には大手が主導権を握り、スタートアップは「モデルの上に載るだけ」という構図に陥りやすく、「養分」化しているようにも見えます。
もちろんAIモデルそのものは汎用ですが特定産業に深く入り込んで顧客の課題を解決する**ビジネスロジックを持つことで、継続的な収益を確保できる可能性はあると思います。
また医療・金融など、規制や機密管理が厳しい領域では、コンプライアンス対応やセキュリティ基盤と一体となったAIソリューションを提供することで大手とは異なるポジションを確立できるでしょう。
API活用ビジネスモデルはそういうニッチなところに活路を見出すしかない気がします。