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バングラデシュの近況ならびに銀行セクターについて

2025年1月23日 05:24

国際通貨基金の世界経済見通しデータによると過去10年のバングラデシュのGDP成長率は年率7%で、国際投資家が投資可能な規模の株式市場を持つ国としてはインドと並び世界で最も急成長しています。

そのバングラデシュは近年、ミドルインカム・トラップと呼ばれる成長の停滞を経験しました。その原因は経済成長に行政や企業の在り方、すなわちガバナンスが追いついていなかったからです。闇雲で泥縄式の成長を追求したことが仇となって腐敗が横行し、Z世代の若者たちがそういう為政者に愛想を尽かし、去年の8月に大規模なデモ行進が発生、ハシナ首相がインドに亡命する事態となりました。政府とのコネをあからさまに顕示してきた産業界の黒幕たちは政治の風向きが変わったことを悟り次々に地下に潜りました。
 
この政治・経済のリーダーシップの不在を埋めるため、学生たちはマイクロファイナンスのグラミンバンクを創設し貧困の根絶に功績があり、ノーベル賞を受賞したモハンマド・ヤヌスを暫定リーダーに推挙しました。いまヤヌスの指揮の下で選挙法の策定が行われており、それが出来次第、年内を目処に公正な総選挙を実施したい考えです。
 
政治の混乱は経済の混乱を招き、外貨準備の減少、インフレの高騰、貿易決済の滞りなどが起こりました。
 
バングラデシュの中央銀行、バングラデシュバンクの新総裁、アサン・マンスールは為替の公式レート+市場レートの併用を廃止しマネージド・フロート制に移行する試みを加速させました。これが功を奏して10%以上乖離していた公式レートと市場レートは現在では2%前後に接近しています。
 
バングラデシュはドバイなど海外への出稼ぎ組が大きい国として知られています。毎月の海外からバングラデシュの家族への仕送り(remittance)の金額は25億ドルにのぼっています。
 
 
闇レートの有利さがほぼ失われたことで在外バングラ人は都市銀行などの公式チャンネルを使って仕送りを始めており、いままで地下経済で補足されてこなかった外国からの資金流入が政府統計にしっかり反映されるようになりました。そのようなこともあり、一時は輸入の3.5ヶ月分程度まで目減りしていた同国の外貨準備は再び増え始めています
 
貸付金利に関してはいままでは金利9%という上限が設けてあり、インフレ率にてらして銀行にとって融資をするメリットがまったくありませんでした。この金利指導を中央銀行が止め、自由化に踏み切ったことで銀行の貸付利ざやは2023年の2.9%から現在は6%近くに拡大しています。それは銀行が融資を通じて健全な利幅を確保できるようになったことを意味し、これまで国債を買ってお茶を濁していた銀行の運用を、より積極的にしています。それは経済にお金が回り始めることを意味します。
 
バングラデシュのNPL(不良債権)の計上の仕方は諸外国の基準より緩く、銀行の資産内容の健全性を測ることが難しかったですが、2025年4月からNPLの基準、開示が強化されることになっています。その関係で今後NPLは15%から30%へジャンプすることが予想されますが、これは最近突然銀行の経営内容が悪くなったのではなく、昔から悪かったものがちゃんと捕捉、報告されていなかったのが表に出るだけです。膿を出すためには必要なことであり、健全化の第一歩を踏み出したという風に理解するべきだと思います。
 
一部の政府系銀行ではハシナ政権と癒着した富豪に対し架空融資という方法を通じてお金を渡し、預金者のお金がそれらの「陰の大物」たちによって盗まれ、それがドバイやシンガポールに流れ出すことが起きました。このため銀行は慢性的な当座の資金の不足に悩まされることになり、世界の貿易パートナーがちゃんと
信用状
を取り交わして貿易の決済をしようとしているのに、銀行がその信用状取引を未済のままに放置することが起きました。現在、64行ある銀行のうち40行がそのような支払い遅延を経験していますが、中央銀行が流動性を注入したことで信用状の未済件数はほぼゼロ近くに減りました。
 
つまり銀行セクターは一つ間違えばメルトダウンのリスクがあったわけですが、上に書いたような一連の中央銀行の適切な処置で危機を脱したのです。
 
いまバングラデシュの預金者は「健全な銀行」と「不健全な銀行」をよくわきまえており、危ない銀行から信頼できる銀行への預金の預け替えが起きています。特に預金の増加が著しい銀行は;
 
BRAC銀行 +34.2%
CITY銀行 +32.1%
MTB +24.9%
 
などです。これらの銀行は預金を低コストで集めることが出来るだけでなく、貸付面でも貸付金利の自由化の恩恵を被るため、いま利益が凄いペースで拡大しています。言い換えれば**「勝ち組」と「負け組」がハッキリしており、投資家にとって投資先を選びやすい**環境になっているということです。
 
貸付成長が一番高い銀行はBRAC銀行で+18%です。
 
現在バングラデシュの銀行の中で総資産利益率(ROA)が最も高い銀行はBRAC銀行で1.4%です。またBRAC銀行のNPL比率は3.6%で最も低い部類に入り、引当比率も102%となっています。
 
BRAC銀行のティア1自己資本比率(CRAR)は17.2%で業界最高です。