暗号資産のリザーブの設置にトランプ大統領が言及しなかったことについて
2025年1月22日 02:07
1月20日、ドナルド・トランプの大統領就任式が行われました。
その直後、100近い大統領令が発令されたのですが、暗号資産の準備(リザーブ)を設置することについては言及がありませんでした。
米ドルが世界の基軸通貨であるかぎり、米国政府が暗号資産を公的リザーブとして保有する必要性は低いです。
なぜなら米国は基軸通貨国として低コストでドル建ての国債を発行できるしドル紙幣を刷ることでシニョリッジ(通貨発行益)を得ることができるからです。
普通、公的な外貨準備の主目的は自国通貨の防衛、国際的決済能力の維持です。基軸通貨国の場合、これらに関して心配する必要はまったくありません。
強いてそれでも暗号資産を保有する意味はグロックチェーン技術への戦略的投資、将来暗号資産の値上がりで債務の返済が軽くなるなどの、ちいさなメリットがあるのみです。
フランスの元大統領、ジスカール・デスタンはアメリカが基軸通貨国として享受している利益を「法外な特権」と呼びました。なぜなら国際金融市場で安定した低利での借り入れが出来ることに加えて経常赤字を問題視されにくい、体外取引で為替リスクが少ない、さらにシニョリッジを得られるからです。
シニョリッジとは20ドル札を印刷するコストはインク代と紙代くらいであり、その差額がまるまる政府の発行益となることを指します。米国の場合、法的なドル札の発行主体は米国財務省造幣局ですが、実質的な発行主体は連邦準備制度理事会です。米国の紙幣は連邦準備銀行のバランスシート上では「負債」となります。そして建前上は資産(例:国債の保有残高)とバランスを取る必要があります。
現在米国での通貨流通量は2.5兆ドル、米国財務省証券の流通残高は34兆ドル前後です。
ドル札の発行に関しては上限の規定はありません。米国財務省証券の発行には連邦債務上限という制約があり、これは度々上限が拡大されています。
いずれにせよ財務省証券の流通額がドル札の流通額の10倍以上あるので、FRBのバランスシート上での負債と資産の辻褄合わせはカンタンに出来るのです。
究極的にはドル札や米国財務省証券を追加発行することの限界は「それがインフレを誘発するか?」ということにかかってきます。
もしインフレが発生するのであれば、それは紙幣や国債を発行し過ぎて通貨の価値が「シャバシャバの水っぽいカルピス」のように薄められてしまったからであり、それは通貨の価値を毀損し、自分で自分の首を絞める行為です。
でも**そうならない範囲でなら、どんだけでも輪転機を回すことが出来ます。**するとカンタンに「無」から「貨幣価値」を創造できるちからが既に連邦政府には備わっているわけだから「暗号資産の準備」など、重複する保険程度の意味しかないのです。