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債券の基礎

2024年7月10日 20:30

債券には以下のような基本的な特徴があります。

  1. 発行体
    債券は国や自治体、企業などによって発行されます。発行体の信用力が高いほど、債券の価格は高くなる傾向にあります。
  2. 額面金額
    債券には一定の額面金額が設定されており、発行時にその金額で販売されます。
  3. 利率(クーポンレート)
    発行体は債券保有者に対して一定の利息を支払います。この利率がクーポンレートです。利率が高いほど魅力的な債券となります。
  4. 満期
    債券には満期日が設定されており、発行体は満期日に額面金額を償還します。満期が長いほど価格変動リスクが高くなります。
  5. 流動性
    発行量が多く、売買が活発な債券ほど流動性が高くなります。流動性が低い債券は売却が困難になる可能性があります。
  6. 格付け
    債券には発行体の信用力を示す格付けがつけられます。AAA格付けが最高で、格付けが低いほどデフォルトリスクが高くなります。
     
    債券は安全資産とされていますが、発行体の信用リスクや金利変動リスク、流動性リスクなどに留意する必要があります。
     
    利率(クーポンレート)と発行体の信用力には反比例の関係があります。
     
    発行体の信用力が高ければ、デフォルトリスク(債務不履行リスク)が低くなります。そのため、投資家は低い利回りでも発行体の債券を購入する傾向にあります。
     
    一方、発行体の信用力が低ければ、デフォルトリスクが高くなるため、投資家は高い利回りを要求します。高い利回りがなければ、その債券を購入する魅力が低くなってしまうからです。
     
    つまり、発行体の信用力が高ければ低利回り債券でも投資家の需要があり、逆に信用力が低ければ高利回り債券でなければ需要が生まれにくくなります。
     
    一般に、国債>社債>ジャンク債の順で信用力が高くなり、その分利回り(利率)は低くなっていきます。投資家は発行体のデフォルトリスクに見合った利回りを求めるため、このような関係が成り立っているのです。
     
    償還期限の長さと利回り(利率)の間には正の相関関係があります。一般的に、償還期限が長ければ長いほど、より高い利回りが要求されます。その理由は主に以下の2点があげられます。
  7. 金利変動リスク
    償還期限が長いほど、その間に金利が変動するリスクが高くなります。金利が上昇すれば、償還時の債券価格は下落します。したがって、長期債は金利変動リスクが高く、投資家はそのリスクに見合うより高い利回りを要求します。
  8. インフレリスク
    償還期限が長ければ長いほど、その間のインフレ率の変動によって実質受取利回りが目減りするリスクが高まります。したがって、長期債ではインフレリスクに対する割増の利回りが要求されます。
     
    具体例をあげると、一般に国債の利回り曲線は右上がりになっています。例えば10年債よりも30年債の方が高い利回りになっているはずです。
     
    このように、長期債ほど金利変動リスクやインフレリスクが高まるため、投資家は償還までの長期化に対してプレミアムとしてより高い利回りを要求する傾向にあるのです。
     
    デュレーションDの計算式は以下の通りです。
     
    D = Σ(t * C / (1 + r)^t) / (Σ(C / (1 + r)^t) + M / (1 + r)^n)
     
    ここで、
    t = 残存期間(年数)
    C = 年間クーポン支払額
    r = 債券の利回り
    M = 額面金額
    n = 満期までの年数
     
    この式から分かるように、満期nが長くなればデュレーションDは大きくなります。デュレーションが大きいほど、金利変動に対する債券価格の変化率が大きくなるため、価格変動リスクが高まるのです。
     
    さらに、デュレーションを使って債券価格の値上がり/値下がり率を次の式で算出できます。
     
    価格変化率 = -デュレーション × 金利変化(%)
     
    この式が示すように、デュレーションが大きいほど、同じ金利変化に対する債券価格の変化率が大きくなります。つまり、満期が長ければ長いほど、価格変動リスクが高まるということです。
     
    一般的に流動性の低い債券ほど高い利回りが要求される傾向があります。その理由は主に以下の2点です。
  9. 流動性プレミアム
    債券の流動性が低いと売却が困難になるため、投資家は流動性リスクに対するプレミアムとして高い利回りを要求します。流動性の高い債券に比べて売却しづらいリスクがあるためです。
  10. 需給の影響
    流動性が低い債券は売買が活発でないため、需要に対して供給が過剰になりがちです。これにより債券価格が下落し、利回りが上昇する傾向にあります。
     
    例えば、国債に比べて社債や非上場債の方が一般的に流動性が低く、それだけ高い利回りが付与されていることが多いです。
     
    また、発行体が信用力が低かったり、債券の残存期間が長かったりすると、流動性が低下する可能性があり、その分利回りが高くなる傾向にあります。
     
    ABSとは、Asset Backed Securitiesの略で、資産担保証券と呼ばれる債券のことです。
     
    ABSの特徴は、次のようになっています。
  11. 原資産
    ABSは、住宅ローン債権、自動車ローン債権、クレジットカード債権などの様々な債権を原資産(担保)とした証券化商品です。
  12. 構造
    これらの債権が組み合わされてプールを形成し、そのプールからのキャッシュフローを裏付けとしてABSが発行されます。
  13. 優先劣後構造
    ABSは通常、元本償還と利払いの順位付け(トランシェ分割)がされています。優先証券と劣後証券に分かれ、損失が発生した場合は劣後証券から持ち分で負担することになります。
  14. 信用補完
    原資産のデフォルトリスクを補うため、劣後債務や第三者による保証、超過担保など、様々な信用補完措置が講じられています。
  15. 流動性
    一般に流動性は債券よりも低く、発行市場は institutionalな市場が中心となります。
     
    ABSの利点は、様々な債権を証券化できること、リスクを分散できること、オリジネーターの財務健全性から切り離せることなどがあげられます。一方で、原資産の信用リスクや流動性リスクに留意が必要とされています。
     
    Indentureとは、債券の発行条件や権利義務関係を定めた契約書のことを指します。
     
    債券を発行する際には、発行体と投資家(債権者)の双方の権利と義務を明確にする必要があります。Indentureはこの役割を果たす重要な契約書です。
     
    Indentureには、通常以下のような内容が記載されています。
  • 債券の額面総額や利率、満期日など基本的な債券条件
  • 元利金の支払い方法
  • デフォルトの定義と、デフォルト時の手続き
  • 債券発行の目的の制限事項
  • 担保や保証人の設定条件(ある場合)
  • 発行体の財務制限条項
  • 債券保有者の権利
  • 受託者(トラスティ)の権限と役割
     
    Indentureは発行体にとっては資金調達条件、投資家にとっては投資条件を明示する重要な契約書です。発行後の権利義務関係をこの契約書に基づいて運用していくことになります。
     
    債券の担保については、以下の点に注意が必要です。
  1. 担保の評価額
    担保となる資産の評価額が適正に算定されているかどうかが重要です。評価額が過大であれば実際の債権回収が困難になる可能性があります。
  2. 担保の処分可能性
    万が一デフォルトが生じた場合、担保資産を円滑に処分できるかどうかが問題になります。処分が困難な担保では実質的な価値が下がります。
  3. 優先劣後構造
    複数の債券で同一の担保物件を共有する場合、優先劣後の順位付けがどうなっているかに注意を払う必要があります。優先順位が低い債券ほど回収リスクが高くなります。
  4. 担保からの直接償還
    デフォルト時に担保物件からの直接償還が認められているかどうかで、債権回収の手続きが異なります。直接償還が認められていない場合は手続きが複雑になります。
  5. 担保物件の管理
    不動産など処分が難しい担保物件については、管理状況が債権回収に大きな影響を与えます。適切な管理がなされているかをチェックする必要があります。
     
    Covenantsとは、債券発行の際に債券インデンチャー(契約書)に記載される、発行体が守らなければならない各種条項や制限事項のことを指します。
     
    主なCovenantsには以下のようなものがあります。
  6. 負債制限条項
    発行体の追加借入れを一定水準に制限する条項です。過度の借入れによる債務不履行リスクを防ぐ目的があります。
  7. 資産売却制限条項
    主要な資産の売却を制限し、債権者の利益を守る条項です。
  8. 配当制限条項
    発行体の配当支払いに一定の制限を設ける条項です。債権者に対する debt paymentを優先させる目的があります。
  9. 資金使途制限条項
    調達資金の使途を特定の目的に制限する条項です。
  10. 担保制限条項
    発行体が新たに担保付債務を設定することを制限する条項です。
  11. merger制限条項
    発行体のM&Aを一定の条件の下で制限する条項です。
     
    このようにCovenantsには、発行体の財務面や事業面での行動を一定の範囲に制限するルールが設けられています。これらの条項に反した場合はデフォルト(債務不履行)事由に該当する可能性があります。投資家保護の観点から重要な条項となっています。
     
    Callable bondsとは、発行体側に一定の期間や条件のもとで、債券を繰上償還(コールオプション)する権利が付与された債券のことを指します。
     
    Callable bondsには以下のような特徴と留意点があります。
     
    【特徴】
  • コールオプション付きなので、発行体が金利低下時に高利回り債を繰上償還できる
  • 通常は発行日から一定期間(例えば5年間等)はコールできない期間(ロックアウト期間)が設定される
  • コールされる場合の価格(コールプライス)はあらかじめ定められている
     
    【投資家が注意すべき点】
  1. reinvestment risk
    金利低下時にコールされると、再投資する際の利回りが低くなるリスクがある
  2. コールプライスの水準
    コールプライスが高ければ、コールされる可能性は低くなる
  3. ロックアウト期間の長さ
    ロックアウト期間が長ければ、投資家にとってはより有利
  4. 発行体の意図
    経営状況が改善されたり、後日低利で借り換えしたい場合はコールされるリスクが高くなる
     
    つまり、Callable bondsを購入する際は、reinvestment riskとコールされる確率、それに伴う損失可能性を十分に見積もる必要があります。投資家と発行体のオプション権益が対立するため、注意が必要な債券の一種です。
     
    アメリカン・スタイルとヨーロピアン・スタイルは、主にオプションの権利行使期間の違いを指します。
     
    【アメリカン・スタイル】
  • オプションの権利を満期日までいつでも行使できるスタイル
  • 例えば、アメリカン・スタイル・コールオプションの場合、満期日より前でも、いつでもコール(権利行使)が可能
     
    【ヨーロピアン・スタイル】
  • オプションの権利行使ができるのは満期日のみ
  • 満期日以外では権利行使できない
     
    債券の分野でこの用語が使われる場合は、主に次の2つのケースです。
  1. コールオプション付き債券
    アメリカン・スタイルならば発行体は満期前でもいつでもコール(繰上償還)できるが、ヨーロピアン・スタイルならば満期日にのみコールできる。
  2. 引渡し日指定の債券(Exercise-into-security)
    アメリカン・スタイルならば引渡し日を自由に指定できるが、ヨーロピアン・スタイルならば一定の日(例えば満期日)にしか指定できない。
     
    一般にアメリカン・スタイルの方がオプション保有者(発行体や投資家)にとって有利となる。反対にヨーロピアン・スタイルの債券は発行体や投資家のオプション価値が低くなる。このスタイルの違いは債券の条件や価値評価に影響を与えます。