資本コストについて
2024年7月2日 20:00
資本コストとは、企業が資金を調達する際に支払わなければならない費用のことです。具体的には次のようなものが含まれます。
- 株主資本コスト
会社が株式を発行して資金を調達する場合、株主に支払う配当が株主資本コストとなります。株主は一定のリターンを求めるので、そのリターン率が株主資本コストとなります。 - 負債コスト
会社が借入れによって資金調達する場合、借入金に対して支払う利子が負債コストとなります。 - 新株発行コスト
新株を発行する際に生じる発行費用も資本コストに含まれます。
資本コストは加重平均資本コスト(WACC)として計算され、企業が新規投資を行う際の基準となります。資本コストを上回るリターンが見込めない投資は避けるべきとされています。つまり、資本コストは企業の最低限のリターン目標となるので、経営判断の重要な指標となります。
WACCの計算式は以下のようになります。
WACC = (E/V × Re) + (D/V × Rd × (1-T))
E = 自己資本(株主資本)
V = 総資本 (自己資本+負債)
Re = 株主資本コスト
D = 負債
Rd = 負債コスト(利子率)
T = 実効税率
つまり、
(E/V × Re) = 株主資本の加重平均コスト
(D/V × Rd × (1-T)) = 負債の加重平均コスト(税引き後)
となり、WACCはその両者の合計値となります。
自己資本コストの計算には資本資産価格モデル(CAPM)などが使われ、負債コストは実際の借入利子率が使われます。
この式で、自己資本と負債の構成比率(E/V、D/V)を加重平均することで、企業全体の資本コストが計算できます。企業は投資案件のリターン率がこのWACCを上回れば、投資に値するということになります。
ターゲット資本構造とは、企業が望ましいと考える自己資本と負債の比率を指します。つまり、理想的な資本構成比率のことです。
企業は資金調達の際、自己資本(株式)と他人資本(負債)のどちらを選ぶかを決める必要があります。この比率が企業の財務リスクやコストに大きな影響を与えるため、最適な資本構造を設定することが重要になります。
ターゲット資本構造を決める要因としては、以下のようなものがあげられます。
- 業界の平均的な資本構造
- 将来の資金需要
- 財務フレキシビリティの確保
- 財務レバレッジの影響
- 資本コストの最小化
- 株主と債権者のバランス
企業は自社の特性や経営戦略に合わせて、望ましい資本構造を検討します。例えば成長企業は自己資本比率が高く、mature企業は負債比率が高い傾向にあります。
一度ターゲットを設定しても、経営環境の変化に合わせて適宜見直しが行われます。資本構造を常にターゲットに合わせるよう調整することで、企業は最適な資金調達を目指します。
借り入れコスト(負債コスト)の計算式は以下のようになります。
負債コスト = 借入金利(金利)× (1 - 実効税率)
具体的には、
借入金利 = 借入額に対する年間支払利子額 / 借入額
実効税率 = 支払った法人税額 / 課税所得
となります。
例えば、企業が年利5%で1億円を借り入れ、実効税率が30%だった場合、
負債コストは以下のように計算できます。
借入金利 = 500万円(年間支払利子) / 1億円 = 0.05 = 5%
負債コスト = 5% × (1 - 0.3) = 3.5%
つまり、企業の実質的な借入コストは3.5%ということになります。
実効税率を差し引くのは、支払利子は法人税の控除対象になるため、借入コストが実質的に下がるためです。よって税引き前の金利よりも税引き後の金利のほうが、企業の実質的な借入コストとなります。
このように負債コストは、金利水準と企業の実効税率によって変動します。WACCの計算でも重要な要素となっています。
優先株のコストの計算式は以下のようになります。
優先株コスト = 優先配当額 / 優先株発行価額
具体的には、
優先配当額 = 1株当たりの優先配当金額 × 発行済優先株式数
優先株発行価額 = 1株当たりの優先株発行価格 × 発行済優先株式数
例えば、優先株1株当たりの配当金が5円で、発行価格が100円、発行済株式数が100万株の場合:
優先配当額 = 5円 × 100万株 = 500万円
優先株発行価額 = 100円 × 100万株 = 1億円
優先株コスト = 500万円 / 1億円 = 0.05 = 5%
つまり、この企業の優先株の資本コストは5%ということになります。
優先株は通常は非累積型で、配当が支払われない年があれば次年度に繰り越されないため、上記の式が一般的に使われています。累積型の場合は未払い分を加算する必要があります。
優先株は一種の永久債と見なせるので、優先株コストは永久に持続する資本コストとして扱われ、WACCの計算にも反映されます。普通株主に先んじて配当が支払われるリスクの低さから、優先株コストは普通株の資本コストよりも低くなる傾向にあります。
普通株式の資本コスト(株主資本コスト)を計算する代表的な方法は、資本資産価格モデル(CAPM)を使うことです。
CAPMによる普通株式コストの計算式は以下のようになります。
Re = Rf + β(Rm - Rf)
Re = 普通株式の期待収益率(資本コスト)
Rf = 無リスク資産の利回り(通常は長期国債利回り)
β = 株式の市場に対する価格変動リスク
Rm = 市場ポートフォリオの期待収益率
要素を説明すると、 - Rfは最低限度の収益率
- (Rm - Rf)は市場の期待リスクプレミアム
- βはその株式の市場平均に対するリスク度合い
となります。
例えば、
Rf = 2%
β = 1.2
Rm = 8%
とすると、
Re = 2% + 1.2(8% - 2%) = 10.4%
つまり、その普通株式の資本コストは10.4%ということになります。
βが1より大きければハイリスク、1より小さければローリスクの株式ということになります。CAPMモデルは一定の前提条件があるものの、広く利用されている株主資本コストの計算方法です。