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新興国株式に投資する際のポイント

2021年10月16日 06:30

新興国は急成長しているイメージがあり、先進国に投資するより新興国に投資したほうがあたかも有利に投資を進めることができるような印象を与えやすいです。

事実はこれと異なります。

新興国が新興国である所以は、なんらかの理由で発展が先進国に劣後したからであり、経済成長のトラックレコードはハッキリ言って悪いです。

もちろん1990年代以降、猛烈な勢いで成長してきた中国のような例外はあります。しかしそれは珍しい例であり、満ち潮がすべてのボートを浮揚する如く、すべての新興国が等しく成長できるときめてかかるべきではありません。

実際、新興国の歴史は挫折と失敗の連続であり折角経済成長が達成できたかと思うと政変や環境の急変で何年分もの蓄えを一度に吐き出すというようなことはザラにあります。

新興国の政府は日本や米国のように民主主義の手続きがきちんと確立しておらず、政治の風向きが変わることで、突然、投資家が不利な立場に立たされることもあります。もっと踏み込んだ言い方をすれば私的所有権が十分に保護、確立されてない国があるということです。

一例として中国は経済のファンダメンタルズとしては最優等生なのですが欧米の投資家の目線からすれば私的所有権の保護はあやしいです。「安心して投資できない」ということは株式投資においては大きな罰点です。その意味において最近中国で起きている一連の政治の風向きの変化は国際投資家にとってはとても残念な展開です。

中国は新興国の中で株式時価総額が最大なので、その中国に投資しにくいということになるとその資金の向かい先がとても気になります。

その意味で新興国の新しいリーダーはインドというのがコンセンサスになりつつあります。次にベトナムは中国リスクを避ける企業からの投資を集めています。トルコはサービス業を中心に新しい成長局面に入っています。メキシコは中国リスクを避けたい米国企業の新たな加工輸出基地として再注目されると思います。

世界の株式市場の中で新興国が占める割合は12%程度です。別の言い方をすればアップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックの5社の時価総額の合計とほぼ同じ程度なのです。

新興国の株式市場は規模が小さい関係で少し海外投資家の資金が流入すると急速に人気化する反面、資金が引き揚げられはじめるとこっぴどい痛手をこうむることが常です。そのギクシャクした動きを敬遠する機関投資家も多いです。

そのような理由から新興国投資は株式投資に置いてはひとつのニッチでしかなく、王道には成り得ません。あくまでも七味唐辛子的な、ポートフォリオの味を引き締めるための小道具的な使い方しか出来ない筈です。

新興国への投資のパフォーマンスが、思っていたより遥かにショボいものに終わるひとつの大きな理由が為替です。

新興国通貨はダラダラ安しているものが多く、折角、現地通貨ベースで株価指数が上っても為替差損をこうむるケースが多いです。

通貨安は輸出をやりやすくするため、新興国の政府はしばしばわざと通貨安政策を取ります。これは投資家にとって歓迎せざる方策です。

ある新興国の経済が好調で株式市場も上げ相場の場合、外国の投資家は①株のキャピタルゲインと②為替の値上がり益のダブルで儲けることが出来ます。しかし為替が強くなるということはその国の輸出競争力はだんだん減退していることを意味し、ゆくゆく貿易収支の悪化を招くこともしばしばです。

貿易収支が悪化すると海外の投資家が浮足立ち、投資を処分してお金を本国へ戻します。このようにして新興国株式市場の弱気相場が引き起こされるわけです。

このように新興国への投資は考慮しなければいけない留意点が米国株に比べると多く、上級者向けにならざるを得ないです。

ところが本来、そのように扱いにくい、難易度の高い投資対象であるにもかかわらず、それを「早道」のような宣伝の仕方で紹介している金融機関が後を絶ちません。とても危険なマーケティングだと思います。

新興国株式への投資は、おのずと主従関係で説明すると「従」、すなわち米国株のような大型市場に対して従属的な地位にあると捉えるべきでしょう。いや、むしろこの主従関係をよく理解することこそが、新興国株式投資のマーケット・タイミングで大きな間違いを犯さないためにとても重要になってきます。

喩えて言えば米国株市場の流動性は大きな水桶です。これと対照的に新興国市場の流動性は、おちょこ程度の大きさです。水桶の水を、おちょこに注ぐのは難しいです。すぐにおちょこが溢れてしまいます。国際機関投資家がもたらす流動性の満ち引きを、しっかり理解する必要があります。

乱暴な言い方をすれば、世界的に景気が悪く、成長している企業を探すのが困難で、金利も低いような局面では欧米の機関投資家は少しでも有利な運用先を求めて国外にお金を積極的に出します。新興国への投資姿勢が高まるのは、そのような局面です。

しかし先進国の景気が良くなり中央銀行が利上げを始めると、国外にお金を出すより国内の投資機会で運用したほうが有利になるので欧米の機関投資家は新興国へ振り分けていた投資資金を本国へ戻します。そのような投資資金の引き揚げのことをリパトリエーションといいます。リパトリエーションが起きている時ほど新興国株式投資が危険な局面はありません。

現在は米国でいよいよテーパーが開始され、金融は緩和→引締めへと向かう局面ですので、新興国からは資金が引き揚げられやすいと考えるべきでしょう。