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投資で成功する道⑧ バリュエーションについての考え方

2021年4月2日 21:15

個人投資家が株式投資をするにあたって最も苦しむのは、ある銘柄が、一体、いま割高なのか? それとも割安なのか? ということがわかりにくい点です。

そこで今日はバリュエーション(=割高、割安の評価)について語ります。

米国の機関投資家が最も一般的に利用するバリュエーションの尺度は**株価収益率(PER)**です。

株価収益率は下の数式で求められます。

株価 ÷ EPS = PER

ここでEPSとは一株当たり利益を指します。その会社の利益額を発行済み株式数で割ることで計算できます。

普通、米国の機関投資家は向こう12ヵ月(=これをフォーワードといいます)の予想EPSを使用します。

現在のS&P500指数のフォーワード株価収益率は21倍です。S&P500は米国を代表する大型株の株価指数です。するとS&P500のPERが21倍なのであればあなたが今調べている株のPERが21より大きな数字なら市場平均に比べて割高、逆にそれ以下であれば市場平均に比べて割安ということになります。

しかしソフトウェア株は常に市場平均より割高に買われますし銀行株は慢性的に市場平均PERを下回るバリュエーションで取引されています。このようにその銘柄の属するグループによって常に割高に買われている、常に割安に放置されている…というような傾向があるのです。この場合、そのセクター(=グループ)での平均のほうが市場全体の平均より重要です。

バリュエーションを論じるときは、かならずその銘柄が属するセクターの中での割高、割安を考えるクセをつけてください。

たとえばソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)は近年人気のセクターです。その代表格である**セールスフォース(ティッカーシンボル:CRM)**は1月31日に会計年度を〆ます。2021年1月31日に終了した会計年度のEPSは$4.38でした。

向こう12ヵ月のEPSとなると英語版ヤフー・ファイナンスコンセンサス予想のページでは「Current Year(2022)」の「Avg. Estimate」という箇所になります。これを書いている2021年4月2日現在のこの数字は$3.43です。

$3.43というEPSは今から10か月後、すなわち2022年1月末〆の12ヵ月のEPSになるので厳密に言えば2か月ズレていますけど、これがいちばん近い数字なので今はこれを使うのがベストだと思います。

2021年4月1日のセールスフォースの引値は$218.72ですから株価収益率は:

218.72 ÷ 3.43 = 63.8

つまり63.8倍ということになります。

もうひとつの例でアドビ・システムズ(ティッカーシンボル:ADBE)を調べるとCurrent YearのコンセンサスEPSは$11.86、株価は483.34です。すると:

483.34 ÷ 11.86 = 40.8

つまりアドビのフォーワードPERは40.8倍になります。

このようにSaaS銘柄はS&P500のPERより遥かに高い水準で取引されているのですが、それはおもに次の3つの理由によります。

① 成長率が市場平均より高い
② SaaSは定期購読モデルなので将来の売上が読みやすい
③ SaaSの売上高は月極め支払いになるので通常の契約形態より過少報告されている

特に最後の点ですが普通、ソフトウェアの契約は2年で、商談が成立すれば売上高がその時点で入金します。しかしSaaSの場合四半期決算では3か月分、すなわち通常のソフトウェア契約なら2年(8四半期)分の売上高が上るところ、その8分の1しか計上できないのです。

これはある意味、本当の商談の大きさが過少に報告されていると捉えることも出来るのです。

さて、新規株式公開(IPO)されて間もない若い企業の場合、まだ利益が出ていない会社も多くあります。その場合、利益が無いわけですから一株当たり利益の尺度そのものが使用できないことになります。

通常、このような場合はPSRを使用します。PSRはPrice to Sales Ratioの略で株価を一株当たり売上高で割算することによって求められます。もしくは時価総額を売上高で割っても同じ結果が出ます。

かつてハイテク株のPSRは10倍前後でした。しかし近年はPSRはどんどん拡大しています。アドビのPSRは、先ほどのヤフー・ファイナンスではStatisticsのページのPrice/Sales(ttm)で確認することが出来ます。4月2日現在、その数字は16.46倍となっています。

一般にPSRは売上高が前年比で+70%近く成長している企業の場合、さらに高いバリュエーションで取引されることも珍しくありません。たとえばクラウドストライク(CRWD)のPSRは43.29で取引されています。ズーム・ビデオ(ZM)の場合は35.22倍です。

このようにPERやPSRといったバリュエーションはカンタンに伸縮しやすいのです。そしてそのように評価がスルスル上る原動力となるのは、その銘柄がしっかりとした決算を出せるという世評です。

四半期決算の発表の際、投資家の期待を裏切らないということが、PERやPSRの伸長(=これをマルチプル・エクスパンションといいます)にとって極めて重要なのです。

もっと踏み込んだ言い方をすれば**「バリュエーションはコンフィデンス(=投資家が銘柄に寄せる信頼)のゲームだ」**ということです。

投資家が(きっとこの会社は良い決算を出してくれる)と信じ続ける限り、高いバリュエーションは揺るがないし、割高でも安心してその銘柄に乗っていることができるのです。逆に投資家の信頼が突き崩されれば、どんなに割安な株でも評価は更に下がり続けるので安心して買い出動することは出来ません。