アへゴスの強制決済は25~50億ドルの損を証券各社にもたらすとJPモルガンが予想 ゴールドマンの「イチ抜けた!」でカオスが引き起こされた
2021年3月30日 06:52
ブルームバーグによると一連のレバレッジをかけたトレードの見込み違いから強制決済になったアへゴス・キャピタルのポジション解消は未だ完了してない模様。
JPモルガンのアナリストの試算では、最終的に総額25~50億ドル前後の損をプライムブローカーにもたらすと見られています。
プライムブローカーとはヘッジファンドの運用資産を構成する現金や証券を預かり、顧客のリクエストに応じて元手よりも何倍も大きいレバレッジ・ポジションを建てることをアレンジすることを指します。
今回、アへゴスと商売していた証券会社はクレディスイス、野村HD、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、ドイチェバンクです。
3月24日(水)にモルガンスタンレーが主幹事でバイアコムCBS(ティッカーシンボル:VIAC)が大型公募しました。それが不首尾に終わった際、「ひょっとしてアへゴスが大損したかも……」ということが証券各社の担当者の脳裏をよぎりました。
3月25日(木)、実際にアへゴスが大きな含み損を抱え、信用取引の追証が払えなくなったので、証券各社はアへゴスの代りに強制的にポジションを処分する方向に傾きました。
この時点で、当事者の一社であるクレディスイスは「この際、関係証券会社各社が一丸となって秩序だった処理を行おう」という根回しを各証券に打診しました。
最初は各証券も共同で処理することに前向きでしたが、ほどなく相互不信に陥り(これは自分だけ抜け駆けし、売り抜けた方が良い)と判断した一部証券は木曜日の夜にはアへゴスに対してデフォルト通知を送りつけました。
翌朝、ブロックトレードの火蓋を切ったのはゴールドマンサックスで、金曜日の朝にバイドゥ(ティッカーシンボル:BIDU)、ビップショップ(ティッカーシンボル:VIPS)などの銘柄を大量に売りました。
この時点で、「ハチャメチャな処分売り競争」が始まり、モルガンスタンレーもゴールドマンサックスに追従するカタチで処分売りを始めたわけです。
普通、ブロックトレーディングの場合、買い手に回る機関投資家は「これで売り切ったの?」ということを気にします。なぜならポジションを仕入れた直後に更に売り物を浴びせられたらたまらないからです。
ところが3月25日(金)は正しくそれが起きました。すなわち同一銘柄を複数の証券会社が違う時間にショップアラウンドするという五月雨的、なおかつ最悪のやり方でアへゴスの持ち株がぶん投げられたのです。各証券が我先にビッドに売り物をぶつけたため、株価が大きく崩れたのは言うまでもありません。
クレディスイスと野村HDの場合、CFD(差金決済取引)でアへゴスにポジションを建てさせていました。普通、このような店頭デリバティブ契約を顧客と交わした場合、証券会社はリスク管理の必要に応じて、必要なだけの現物株をヘッジ目的でLONG(買い持ち)にします。しかし現株の価格が下落しすぎた場合、顧客が差金決済取引を履行できなくなるので、カバー取引として確保したLONG分の損を最小限に食い止めるため、投げ売りしなければいけなくなります。
証券によってアへゴスとの取引でこうむった損害額に大きな差があるひとつの理由は、通常の信用取引でポジションを建てさせていたか? それともCFDなどの高レバの商品を勧誘したのか? の差であるように見受けられます。