投資で成功する道⑤ 自社株買戻し、配当に関する考え方
2021年3月18日 16:23
新規株式公開(IPO)して間もない若い企業の場合、いきなり配当を出す会社は少ないです。なぜなら若い企業は配当を出すより、本業で儲かったカネを事業に再投資したほうが業容を大きくしやすく、成長を通じて株主に報いることが出来るからです。
ある程度スケールが大きくなり、利益もしっかりだせるようになり、成長のペースも昔ほどは急速でなくなった会社は、利益の剰余をどう処分する? という問題について考え始めます。
その際、経営者が最初に思いつくことは自社株の買戻しです。
自社株の買戻しは「できるときに、できる範囲内でやればよい」という性格が強いです。ある年、自社株の買戻しを行ったからといって翌年もそれを実施する必要はありません。その意味において経営者の心理的なハードルは低いのです。
**自社株の買戻しを行うと発行済み株式数が減ります。それは一株当たり利益(EPS)を押し上げる効果があります。**EPSの数字が上れば株価も上昇しやすいです。これが自社株買戻しで株主に報いるという考え方のロジックです。
自社株買戻しはネット企業のような若い会社でも実施しているところが散見されます。つまりある企業の成長のステージに関して特別重いメッセージは伴わないのです。
これと対照的に**配当を出すという決断は「我々はもう急成長企業ではなくなりました」という事を市場に対してシグナルしてしまう恐れがあります。**なぜなら配当を出すということは今後毎年のように使い道のない利益の剰余が出ることを暗示するからです。
配当というものは一度出し始めると普通、継続しなければいけません。四半期ごとにコンスタントに配当を出す企業が多いです。
もちろん「配当を止めてはいけない」ということが法律で決まっているわけではありません。しかし配当を止めるということは無配転落という烙印を押されることを意味し、株価急落の原因になります。同様に配当額を減額することは減配と呼ばれるのですが、こちらも投資家から嫌気されます。
このように配当は一度「出す」と決めたらなかなか後戻りしにくいです。だからこそ余裕が出来たらまず自社株の買戻しからスタートして、本当に安定的に利益の余剰を株主に還元できるようになった段階で配当を出すというのが堅実な財務部長が考えることなのです。
その場合でも利益に比べてほんの少しだけを配当に回すのが手堅いやり方だと思います。
一株当たり配当 ÷ 一株当たり利益 × 100 = 配当性向
という数式を覚えて下さい。
下はロッキード・マーチンの一株当たり業績のチャートです。

いま2020年の一株当たり配当(DPS)は9.8、一株当たり利益(EPS)は24.3ですから:
9.8 ÷ 24.3 × 100 = 40.3
つまりロッキード・マーチンの配当性向は40.3%ということになります。配当性向は「利益のどれだけを配当に回しているのか?」を知る上で重要です。
配当を出し始めて歴史が浅い企業の場合、配当性向は低いです。配当性向は「低ければ悪い、高ければ良い」というものではありません。
最初配当性向が低くても、将来コンスタントに配当性向をじりじり引き上げているような会社は投資家から信頼されます。
逆に配当性向が高くなりすぎている会社の場合、なにかの拍子に利益が出せなくなると、たちまちタコ配(=利益以上に配当を払ってしまっている状態)や減配に追い込まれるリスクがあるからです。
景気に業績が左右される市況的な産業の場合、配当性向は50%を超えるべきではないと思います。でも食品やたばこのような、景気に左右されにくい業種の場合、配当性向は50%を超えていても大丈夫だと思います。
配当利回りは次の式で計算できます:
一株当たり配当(DPS) ÷ 株価 × 100 = 配当利回り
上のロッキード・マーチンの場合、DPSは9.8、今日(2021年3月17日)の株価は351ドルなので:
9.8 ÷ 351 × 100 = 2.79
つまり2.79%となります。
なお**「魅力的な配当利回り」と言えば普通2%から6%の間の配当利回りを指します。**米国を代表する大型株の株価指数、S&P500の平均配当利回りは1.53%なので、それ以上の配当利回りなら高利回りというわけです。
しかし配当で気を付けないといけないのは何か深刻な経営上の問題が原因で株価が低迷しており、その結果として配当利回りが高い数値になっているケースが多々あるということです。
今一度直ぐ上の計算式をもう一度見て欲しいのですが、株価の数字が小さくなると解が大きくなるのは理解して頂けると思います。つまり配当が立派だから配当利回りが高いのではなく、株価が何か深刻な問題でボコボコに凹んでいるから高い利回りがついてしまっているのです。
普通、7%を超える配当利回りはトラブルの前兆であり、8%を超える配当利回りの会社は倒産を織り込んだ水準だと言えます。このような高過ぎる配当利回りの株に手を出さないで下さい。