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ダイレクト・フロア・リスティングという新しく認められた資本調達法について

2020年12月28日 19:30

クリスマスの直前の12月22日に86年続いてきた米国の新規株式公開(IPO)のやりかたに関し大きなルール変更がありました。

具体的にはダイレクト・フロア・リスティングが認められました。

これは今から1年前の2019年12月にニューヨーク証券取引所(NYSE)が米国証券取引委員会(SEC)に対して「認めて欲しい!」とリクエストしていた懸案が、今回、認められたという事です。

ダイレクト・リスティング自体が許されていることは皆さんもスラック(WORK)、スポティファイ(SPOT)、パランティア(PLTR)で経験済だと思います。

もういちどダイレクト・リスティングをおさらいすれば、これは「ホイキタ、どん!」でいきなりトレードを始めてしまうようなIPO手法を指します。

今回、なにが新しいか? といえばそれは会社側が新株を発行することでフレッシュな資金を調達することに対してもOKになったという点です。

会社側がニュー・マネーをこの方法で調達するときの単価は、IPOがNYSEで取引開始される際のOPEN価格ということになります。

今回の改変はこれまで存在した一部大手機関投資家の優遇が無くなったという意味で個人投資家にとって溜飲が下がる承認だと思います。

これまでは主幹事証券がまず大手機関投資家を説得し、彼らに沢山の株を割り当てる見返りとして安定株主として上場後もその企業をサポートすることを要請していました。

これは上場後の株価の安定という見地からは「仕方ないな」と思われてきた反面、見方を変えればそのような常連の大口顧客にたいする「えこひいき」に他なりません。

ダイレクト・フロア・リスティングでは「えこひいき」が無くなり、個人投資家が機関投資家とまったく同じ土俵で戦えるようになります。

その反面、事前に安定株主工作をしないため、アフターマーケットでの取引値段は乱高下することが予想されます。また買い手より売り手、すなわち発行体に有利な値段から取引がスタートすることになります。

繰り返しになりますが、ダイレクト・フロア・リスティングでは①発行体が高値で資金調達できるので②大口機関投資家も個人投資家も等しく不利な戦いを強いられるわけです。

細かい実施方法の話に入ってゆくと、今回から新導入される手順として、IDO(イニシャル・ダイレクト・オファリング)オーダーという発注方法を発行体がIPO初値の売出しで用います。

つまり「唯一の売り注文」は会社そのものが、ひとかたまりにして出す売り注文ということです。

NYSEは「板寄せ」、すなわちすべての買い注文とIDOオーダーの売り注文を全部並べてマッチングするわけです。

寄付きのトレードは、巨大なクロス取引になります。

発行体企業が出すひとかたまりの大きな売り注文の最低指値は売出目論見書のレンジの下限、もしくはそれより上でなくてはなりません。

IDOオーダーの「成行(at market)注文」はOKです。

但し出来値が売出目論見書のレンジの下限より下になりそうな場合は「需要が不十分!」という判断になり、IPOそのものが不成立になります。その場合、ディール自体が中止され、引込められます。

2021年からはこの新しいIPO方式がメニューに加わるわけで、最初は躊躇する企業も多いでしょうけれどそのメリットを考えれば次第にダイレクト・フロア・リスティングが市民権を獲得してゆくと考えるのが自然です。

個人投資家にとって「IPO取引」は今まで以上に重要なスキルになってきます。