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エアビーアンドビー、ドアダッシュ、ロブロックスが援用するユニファイド・オークションというIPO手法を解説

2020年12月7日 19:04

エアビーアンドビー(ティッカーシンボル:ABNB)、ドアダッシュ(ティッカーシンボル:DASH)、ロブロックス(ティッカーシンボル:RBLX)が近く新規株式公開(IPO)しますが、その際、ユニファイド・オークションという手法が採用されることが話題になっています。

ユニファイド・オークションは最近、ユニティ・ソフトウェア(ティッカーシンボル:U)のIPOで使用された実績があります。

その際、著名投資家のひとり、アーク・インベストメントのキャシー・ウッドがツイッターで「わが社にユニティのIPOが回ってこなかった。主幹事ゴールドマンは何している!」と不満をぶちまけたことでこの新しい手法が脚光を浴びました。

ユニファイド・オークションはウォール街ではなくネットのプログラマティック広告の世界で編み出された手法です。

ウォール街がIPOでユニファイド・オークションを実施する場合、まずオンライン・ポータルを開設し機関投資家から「何ドルで何株買いたい」の需要を受け付けます。

その需要表を見ることで発行体と投資銀行は投資家がそのIPOに幾ら支払っても良いと考えているかのおおまかな需要を測ることができます。

実際の株の割当ては自動的になされるのではなくユニファイド・オークションでのデータを参考にしながら主幹事の判断で行われます。

従来のIPOではブックビルディング方式が採用されてきました。ブックビルディング方式では価格をピンポイントで指定することなしに「売出し目論見書に刷られている価格設定の範囲内なら何株まで欲しい!」ということを機関投資家が投資銀行に意思表示します。

つまりどれだけその機関投資家が強くそのIPOを欲しがっているか? ということの意思表示は、価格ではなく、注文の大きさ、すなわち株数でしか表現できないわけです。

この制約は、おのずと(それなら大き目の注文をいれてやろう!)という投資家側の心の動きを誘発します。よく「このディールは人気で倍率が30倍になっている!」などの噂を耳にするのは、このような大きさを競うメンタリティーに端を発しているわけです。

それは水増し注文を誘発し、それほどホットディールでない案件でもものすごく需要が殺到しているかのような錯覚をひきおこします。

これは価格での競争をさせず、注文サイズのみでの競争をさせることが原因なのでユニファイド・オークションでは「IPO株が欲しいならより高い値段を提示しなさい」とすることでより実需を忠実に反映したオーダー・ブックを作成する働きがあるわけです。

ユニファイド・オークションでは高い価格を提示した投資家が有利になるため従来のブックビルディング方式で可能だった安定株主工作(=長期にその株を持ってくれる大口投資家を優先するやりかた)ができにくくなります。

またアフターマーケットでの「おつきあい」の買い注文をめぐる投資銀行と機関投資家との会話も、当然、変質して来ざるを得ないわけです。なぜなら投資銀行側に「安いIPOをあなたに特別に配分します!」という裁量余地が小さくなるので、機関投資家も恩義に感じなくなるからです。

それはIPO取引開始後の価格の不安定を招くかもしれません。

従来はシンジケート部と各機関投資家を担当するセールスマンが綿密な打ち合わせをすることでホットディールの錯覚を排除してきました。しかし新型コロナで投資銀行の社員も皆、在宅勤務となっているため従来のような密度の濃いコミュニケーションは取りにくくなっています。シンジケート部が、この際、ブックビルディング方式を諦め、より透明性の高いユニファイド・オークションへと移行したのは時代の流れ、当然の事、という風に受け止めることもできるでしょう。

ユニファイド・オークションは投資家に不利、発行体に有利な手法です。